「また職員が辞めてしまった…」 「募集をかけても、なかなか良い人が来てくれない」
多くの介護事業所の経営者様、管理者様が、まるで終わりのない迷路のように「人」に関する悩みを抱えていらっしゃいます。
職員の離職は、採用コストの増大だけでなく、残った職員の負担増、チームワークの乱れ、ひいてはサービスの質の低下にも直結する、経営における最大の課題の一つです。
「うちには高額な給与を払う余裕はないから…」と諦めてしまうのは、まだ早いかもしれません。
実は、大きなコストをかけずとも、“今すぐ”始められる職場改善で、職員の定着率は大きく変わります。
本コラムでは、その具体的な3つの方法をご紹介します。
改善策1:週に一度の「15分面談」で、不満を“ガス抜き”する
職員が離職を考える大きな理由の一つに、「自分の気持ちを誰も分かってくれない」「相談できる相手がいない」という孤独感があります。日々の業務報告だけでなく、一人ひとりの職員と向き合う時間を意図的に作ることが、信頼関係の第一歩です。
そこでお勧めしたいのが、週に一度、15分だけの「1on1(ワンオンワン)ミーティング」です。
「今週、何か困っていることはない?」 「仕事でやりがいを感じた瞬間はあった?」 「何か改善してほしい点はある?」 といった、短い会話で構いません。
大切なのは、「あなたのことを気にかけている」というメッセージを伝え、職員が抱える小さな不満やモヤモヤを、大きくなる前に“ガス抜き”してあげることです。
この積み重ねが、「この職場は自分のことを見てくれている」という安心感に繋がります。
改善策2:「ありがとう」を見える化し、承認欲求を満たす
介護の仕事は、精神的にも肉体的にもハードです。
それにもかかわらず、日々の頑張りが「当たり前」だと思われてしまうと、職員のモチベーションはどんどん下がっていきます。
人は誰でも「認められたい」「感謝されたい」という承認欲求を持っているのです。
そこで、「感謝の見える化」を始めてみませんか。
例えば、「サンクスカード」のような仕組みを導入し、職員同士が感謝の気持ちをカードに書いて渡し合う。
あるいは、朝礼で「〇〇さんの昨日の〇〇という対応、本当に素晴らしかったです。ありがとう!」と、具体的に褒める時間を作る。
口頭で伝えるだけでなく、カードや掲示物といった「形」に残すことで、感謝の気持ちがより強く伝わります。
「自分のがんばりは、ちゃんと評価されている」と感じられる職場は、職員にとって何物にも代えがたい居場所となるはずです。
改善策3:“地味にツラい”業務を一つ、みんなで見直す
日々の業務の中には、「これ、本当に必要?」「もっと効率的にできないかな?」と感じるような、“地味にツラい”作業が潜んでいるものです。
例えば、煩雑な記録物の書き方、非効率な清掃の順番、分かりにくい備品の管理場所など、一つひとつは小さくても、積み重なると大きなストレスになります。
まずは一つで構いません。
職員に「今、一番やめたい・変えたいと思っている単純作業は何か」をヒアリングし、みんなで改善策を話し合ってみましょう。
大切なのは、トップダウンで決めるのではなく、現場の職員を巻き込んで改善を進めることです。
自分たちの意見で職場が良くなったという成功体験は、職員の当事者意識を高め、「もっと良くしよう」という主体的な行動を引き出すきっかけになります。
今回ご紹介した3つの方法は、いずれも特別な機材や多額の費用を必要としません。
必要なのは、経営者・管理者様が「職場を良くしたい」と本気で願い、一歩を踏み出す勇気だけです。
とはいえ、日々の運営に追われる中で、新しい取り組みを始めるのは簡単なことではないかもしれません。
「何から手をつければ良いかわからない」「うちの事業所に合ったやり方を知りたい」。
そんな時は、一人で抱え込まず、外部の専門家に相談するのも一つの有効な手段です。
客観的な視点からの支援が、貴社の介護経営を良い方向へ導くきっかけになるかもしれません。




