【介護経営者必見】ケアプラン有料化の再燃。制度改正が現場に与える3つの問題点とは

2027年度の次期介護保険制度改正に向けた議論が本格化する中、長年の懸案事項である「ケアプラン有料化」が、再び大きな焦点として浮上しています。

 

現在、利用者の自己負担なく10割給付で提供されている居宅介護支援。

ここに新たに利用者負担を導入すべきか否かという議論は、介護経営の根幹を揺るがしかねない、極めて重要なテーマです。

 

今回の社会保障審議会・介護保険部会でも、現場関係者からは慎重な意見が相次ぎました。

本コラムでは、この「ケアプラン有料化」がなぜ今、再び議論の俎上に載せられているのか、そして、もし導入された場合、現場や介護経営にどのような影響が及ぶのかを深掘りしていきます。

 

なぜ今、再び「ケアプラン有料化」が議論されるのか?

この議論が繰り返される背景にあるのは、超高齢化社会における介護保険財政の逼迫です。

増え続ける給付費を前に、現役世代の保険料負担は限界に近づいているという声が、健康保険組合連合会や経団連などから上がっています。

彼らの主張は、「給付と負担のバランスを見直す一環として、聖域なく全てのサービスを検討すべき」というものです。

 

財政の持続可能性というマクロな視点に立てば、一理ある主張かもしれません

。しかし、私たちはこの問題を、現場で日々奮闘するケアマネジャーや、サービスを必要とする利用者のミクロな視点からこそ、考えなければなりません。

 

現場が警鐘を鳴らす「3つのリスク」

介護保険部会では、日本介護支援専門員協会をはじめとする現場の関係者から、有料化に対する強い懸念が示されました。その意見を集約すると、大きく3つのリスクが浮かび上がってきます。

 

1. 「利用控え」による重度化リスク

最も懸念されるのが、自己負担の発生による「サービスの利用控え」です。

たとえ数百円であっても、年金生活者にとって新たな負担は決して軽いものではありません。

「相談するだけでお金がかかるなら…」と、必要なケアマネジメントを躊躇する利用者が増える可能性があります。

 

その結果、心身の状態が悪化しても誰にも相談できず、気づいた時には重度化してしまっていた、というケースが増加しかねません。

これは利用者本人のQOLを著しく損なうだけでなく、結果的により多くの介護給付費が必要となり、制度全体の負担を増大させるという本末転倒な事態を招くリスクをはらんでいます。

 

2. 公正中立なケアマネジメントの崩壊リスク

居宅介護支援は、利用者が適切なサービスを過不足なく利用できるよう導く、介護保険の「羅針盤」とも言える重要な機能です。

ケアマネジャーは、特定の事業者に偏ることなく、公正中立な立場で多種多様なサービスを調整する役割を担っています。

 

しかし、有料化によって利用者との間に「対価」が発生すると、この関係性が崩れる恐れがあります。

「お金を払っているのだから」と、利用者が過剰な要求をしたり、ケアマネジャーの調整能力そのものを値踏みしたりするような状況が生まれかねません。

これは、専門職としてのケアマネジャーの疲弊を招き、深刻な人手不足をさらに加速させる要因となり得ます。

 

3. 制度の根幹を揺るがすセーフティネット機能の形骸化リスク

そもそも居宅介護支援とは、介護が必要になった人が、制度の入り口で迷うことなく、適切な支援につながるためのセーフティネットです。

この入り口部分に金銭的なハードルを設けることは、制度の理念そのものを揺るがすことに繋がりかねません。

誰もが公平に必要な支援を受けられるという大原則が崩れ、情報格差や経済格差が、受けられるサービスの格差に直結してしまう危険性があるのです。

 

まとめ:目先の財源論を超えた議論を

ケアプラン有料化の議論は、年末に向けてさらに深まっていく見通しです。

財源確保という視点も重要ですが、それ以上に、この制度改正が現場の運営にどのような影響を与え、利用者の生活をどう変えてしまうのか、多角的な視点からの慎重な判断が求められます。

私たち事業者は、この国の介護の行く末を左右する重要な議論の動向を、固唾をのんで見守る必要があります。

 

このような複雑な制度改正の議論は、一つひとつの事業所の介護経営に大きな影響を及ぼします。

自社の運営方針や将来の事業計画について、不安や課題を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

先行きの見えない時代だからこそ、時には外部の介護コンサルタントや専門家相談し、客観的な支援を受けながら経営の舵取りを考えることも、有効な選択肢の一つと言えるでしょう。