10月4日、自民党の高市早苗新総裁が就任し、その後の記者会見で述べた内容が、私たち介護・医療業界に大きな注目を集めています。
数ある政策課題の中で、高市新総裁が「少し急がなければいけない」と、強い危機感をもって言及したのが、まさに介護施設や病院が直面している深刻な経営状況だったからです。
この発言は、単なる所信表明に留まらず、今後の国の政策、ひいては個々の介護事業所の運営に直結する可能性を秘めています。
本コラムでは、高市新総裁の発言のポイントを読み解き、これからの介護経営にどのような影響が考えられるのかを探っていきます。
新総裁が認識する「待ったなし」の経営状況
高市新総裁が会見で示した認識は、現場で日々奮闘する多くの介護経営者の実感と重なるものでした。
具体的には、「病院に関しては7割が深刻な赤字。介護施設の倒産も過去最高になった」と、具体的な数字を挙げて厳しい現状に言及しています。
これは、国のトップが物価高騰や人材不足に喘ぐ現場の窮状を、深刻な問題として捉えていることの表れと言えます。
特に重要なのは、その後の発言です。
介護現場の経営を支える介護報酬の改定は2027年度に予定されていますが、高市新総裁は「それを待っていられない状況だ」と断言しました。
この言葉の裏には、現在の報酬体系が、昨今の急激な物価や光熱費、人件費の上昇といったコスト増に全く追いついていないという現実があります。
改定を待っていては、地域の介護インフラが崩壊しかねないという強い危機感が、この発言からはっきりと見て取れます。
解決策としての「補正予算」と「賢い投資」
では、待ったなしの状況にどう対応するのか。高市新総裁が示した方向性は二つあります。
一つは、「補正予算」による緊急支援です。
次期改定を待たずに、喫緊の課題である物価高対策として、補正予算を活用した直接的な支援を検討する考えを表明しました。
これが実現すれば、多くの事業所にとって、まさに干天の慈雨となる可能性があります。
どのような形で、どの程度の規模の支援が行われるのか、今後の具体的な動きを注視する必要があります。
もう一つは、「ワイズスペンディング(賢い投資)」という考え方です。
高市新総裁は、健康・医療分野を国の成長を促す「呼び水的な投資」の対象分野として挙げました。
これは、介護や医療を単なるコスト(支出)として捉えるのではなく、需要を生み、税収増にも繋がる「投資」と位置づける、大きな視点の転換を示唆しています。
この考え方が政策の根幹となれば、場当たり的な支援に留まらず、介護業界全体の持続可能な発展に向けた、中長期的な支援策が期待できるかもしれません。
今後の動向と、事業者に求められる姿勢
新総裁の就任は、介護業界にとって、変化の始まりとなる可能性があります。
これまで現場が訴え続けてきた経営の厳しさが、国の最重要課題の一つとして認識されたことは、間違いなく前向きな一歩です。
しかし、これらの発言が具体的にどのような政策として結実するのかは、まだ不透明です。
私たちは、補正予算の議論や今後の政府の動向を注意深く見守りながら、自社の経営基盤を強化し続ける必要があります。
このように先行きが不透明な時世においては、日々の運営や将来の事業計画について、不安や課題を感じることも多いかと存じます。
自社の経営状況を客観的に分析し、次の一手を考える上で、時には外部の介護コンサルタントや専門家へ相談することも、この難局を乗り越えるための有効な選択になるかもしれません。




