訪問看護ステーションの運営において、利用者の自己負担額に上限を設ける「高額療養費制度」は、切っても切れない重要な制度です。
特に、難病やターミナルケアなど、長期にわたり高額な医療保険サービスを必要とする利用者を支える上で、この制度は不可欠なセーフティネットとして機能してきました。
しかし今、この制度が大きな見直しの岐路に立たされていることをご存知でしょうか。
2024年に予定されていた改定は見送られましたが、議論は決して止まってはいません。
本コラムでは、2回にわたり、この高額療養費制度の見直しがなぜ行われようとしているのか、そしてそれが私たちの訪問看護事業にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、その核心に迫ります。
なぜ今、見直しの議論が起きているのか?
高額療養費制度は、患者にとって「なくてはならない制度」であるという点では、国も専門家も共通の認識を持っています。
それにもかかわらず見直しの声が上がる背景には、日本の社会保障が直面する3つの大きな課題があります。
1.超高齢化と医療の高度化による医療費の増大
2.高額な新薬の登場による保険財政の圧迫
3.現役世代の保険料負担の限界
これらの課題を前に、「制度の持続可能性をどう確保するか」という視点から、給付と負担のバランスを見直さざるを得ない状況に追い込まれているのです。
議論の最大の焦点「応能負担」の強化とは
専門委員会で議論されている内容の中心は、「応能負担の徹底」という考え方です。
これは、「負担能力のある方には、相応の負担をお願いする」という考え方を、より厳格に適用しようという動きです。
具体的には、以下のような点が論点となっています。
・所得区分の細分化: 現在よりも所得区分を細かく分け、より負担能力に応じた自己負担限度額を設定する。
・外来特例の見直し: 現在、70歳以上の高齢者に適用されている外来の自己負担上限額(外来特例)の範囲を縮小する。
この「応能負担」の強化は、一見すると公平なようにも聞こえます。
しかし、この見直しが、特に長期にわたる療養を必要とする訪問看護の利用者に、どのような影響を与えるのかを慎重に見極める必要があります。
まとめ:対岸の火事ではない制度の変革
高額療養費制度の見直しは、病院医療や外来だけの話ではありません。
利用者の自己負担額が直接的に変わることで、訪問看護ステーションの運営や保険請求にも影響が及ぶ、まさに「地続き」の問題です。
次回の後編では、この見直しが具体的に訪問看護ステーションの経営にどのような影響を与え、私たちは今後の方向性として何を準備しておくべきなのかを、さらに詳しく解説していきます。
このような制度の大きな変革期において、自社の運営や保険請求の体制に不安を感じることはありませんか?
私どもは訪問看護ステーションの開設から運営支援、そして複雑な保険請求業務に至るまで、専門的な知見で皆様をサポートしております。
ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。




 
