【経営者必見】令和8年度厚生労働省予算概算要求から読み解く介護事業の未来予測と経営戦略

皆様、こんにちは!

 

先日、来年度の国の施策の方向性を占う上で極めて重要な「令和8年度厚生労働省予算概算要求」が公表されました。

その額、一般会計だけで約34.8兆円。

この天文学的な数字の中に、今後の介護事業運営のヒントと、私たちが向き合うべき課題が隠されています。

 

日々の現場運営に追われる中で、こうした国の資料をじっくり読み解く時間はなかなか取れないかもしれません

しかし、この中には来年度の介護報酬改定の方向性や、国の重点政策が明確に示されています。

 

今回は、介護事業経営者の皆様が押さえておくべきポイントに絞って、この概算要求を分かりやすく解説していきます。

予算総額から見える、日本の「不可逆的な流れ」

まず、概算要求の全体像を見てみましょう。要求額は34兆7,929億円で、令和7年度当初予算から4,865億円の増額となっています。

この増加分のうち、実に3兆5,160億円が「年金・医療等に係る経費」の増加、いわゆる社会保障費の自然増によるものです。

 

これは、日本の高齢化が今後も進展し、社会保障制度を支えるための費用が構造的に増え続けるという、もはや誰にも止められない大きな流れを示しています。

介護事業は、この大きな流れの中で運営されていることを改めて認識する必要があります。

国の財源が限られる中で、いかにして介護サービスの質と量を確保していくか。

そのための「選択と集中」が、今後の予算配分でよりシビアになっていくことが予想されます。

 

介護分野の最重要テーマは、やはり「人材確保」

では、その中で介護分野はどのように位置づけられているのでしょうか。

今回の概算要求で、介護関連の重要事項として明確に挙げられているのが「介護人材の確保」です。

 

これは、消費税率引き上げに伴う社会保障充実策の一環とされており、国が介護現場の人材不足を最重要課題と捉えていることの表れです。

しかし、ここで注意すべきは、具体的な事業内容や予算額はまだ決まっておらず、「今後の予算編成過程で検討する」という、いわゆる「事項要求」の形をとっている点です。

 

これは、年末にかけての政治的な調整や経済状況、税収の見込みなどを踏まえて、最終的な金額と使い道が決まることを意味します。

参考として令和7年度の予算では、「介護職員の処遇改善」に1,000億円以上が計上され、地域包括ケアシステムの構築などにも多くの予算が割かれました。

 

この流れから、令和8年度も介護職員の更なる処遇改善や、働きやすい職場環境づくりのための支援策が重点的に議論される可能性が高いと見てよいでしょう。

経営者としては、この「人材」に関する国の動向を、秋から冬にかけて特に注視していく必要があります。

 

資料に「書かれていない」ことから未来を読む

一方で、今回の資料には直接記載されていないものの、介護業界の未来を左右する重要な論点があることも忘れてはなりません。

それは、介護保険制度そのものの見直しに関する議論です。

 

具体的には、「高齢者の自己負担割合の引き上げ」「ケアプランの有料化」、そして「軽度者向けの訪問・通所介護(特に生活援助)の市町村事業への移行」といったテーマです。

これらは、予算の使い方(カネ)の話とは別に、制度の仕組み(ルール)を変える話であり、社会保障審議会・介護保険部会といった専門の場で議論が進められています。

 

今回の概算要求資料にこれらの記載がないからといって、議論が止まっているわけではありません。

むしろ、限られた財源をどう効率的に使うかという視点から、給付と負担の見直しは常に検討されています。

 

私たち事業者は、予算の動向という「アクセル」と、制度改正という「ハンドル」の両方の動きを常に把握し、自社の事業にどのような影響が及ぶかをシミュレーションしておく必要があります。

 

まとめ 変化の時代を乗り越えるための「羅針盤」とは

今回の令和8年度概算要求から読み解けることをまとめると、以下のようになります。

 

  1. 社会保障費の自然増は避けられず、国の財政はますます厳しくなる。
  2. その中で「介護人材の確保」は最優先課題だが、具体的な中身はこれから決まる。
  3. 水面下では、自己負担増や給付範囲の見直しといった、事業の根幹を揺るがす制度改正の議論も続いている。

未来を正確に予測することは誰にもできません。

しかし、国の示す資料から大きな方向性を読み取り、来るべき変化に備えることは可能です。

 

自社の強みは何か、地域の中でどのような役割を果たすべきか、そして、そのためにはどのような経営戦略を描くべきか。

今ほど、経営者の「羅針盤」が求められる時代はないでしょう。

 

こうした大きな変化の波を前に、自社だけで最適な航路図を描き、実行していくのは決して容易なことではないかもしれません。

時には客観的な視点や専門的な知見を持つ外部の力を活用することも、荒波を乗り越えるための有効な手段となります。

 

今後の事業展開や経営戦略について、もし少しでもご不安やお悩みがあれば、一度立ち止まって専門家と共に考えてみることも、未来を切り拓くための有効な一手となるかもしれません。