前回のコラムでは、訪問看護の「共同指導」がデータに基づき客観的に選定される、という厳しい現実について解説しました。
では、もし自社がその対象として選定された場合、一体何をしなければならないのでしょうか。
結論から言えば、それは「“災害級”とも言える膨大な量の書類準備」です。
指導日の約1か月前に通知が届いてから、通常業務と並行してこれらを準備する困難さは、想像を絶します。
今回は、その過酷な実態と、求められる対応について解説します。
指導対象は「過去」のすべて
共同指導で求められる書類は、事業所の運営に関わるほぼすべての記録と言っても過言ではありません。
大きく分けて、以下の3種類に分類されます。
- 利用者に関する記録 訪問看護指示書、計画書、記録書、報告書はもちろん、契約書や同意書、サービス提供票まで、指導対象となる利用者(指導日の直前に約30名分が通知)のすべての記録が必要です。
- 従事者に関する記録 履歴書、雇用契約書、免許証の写し、勤務表、出勤簿、研修記録など、在籍スタッフだけでなく直近1年以内の退職者分まで求められます。職員の適正な配置や勤務実態を証明する重要な資料です。
- 事業運営に関する記録 運営規程、虐待防止関連の資料、事業計画、領収証の控え、審査支払機関からの増減点返戻通知など、事業の根幹をなす記録一式です。
これらの書類を、指導担当者が確認できるよう整理し、当日会場へ持参、あるいは事前に提出しなければなりません。
「日頃の備え」がなければ対応不可能
これらの書類リストを見て、皆様は何を感じるでしょうか。「1か月あれば何とかなる」と思えるでしょうか。
おそらく、多くの方が「通常業務を止めても終わらないかもしれない」と感じるはずです。
特に、利用者名が指導日の1週間前と前日に分けて通知されるという運用は、直前まで準備が完了しないことを意味し、精神的なプレッシャーも相当なものになります。
この現実は、私たちに一つの真理を突きつけます。
それは、共同指導の準備とは、「通知が来てから始めるもの」ではなく、「日々の業務の中で常に行っておくべきもの」であるということです。
記録の不備は、その場しのぎで取り繕えるものではありません。
次回は、指導後の流れと、指導を「危機」ではなく「機会」に変えるための、攻めの事業運営について解説します。
運営指導や監査という言葉に、漠然とした不安を感じていませんか?
日々の記録管理や請求業務の適正性に、自信が持てずにいませんか?
私どもは、指導に動じない盤石な運営体制の構築をお手伝いします。
訪問看護ステーションの立ち上げ時から、正しい記録管理の仕組みを導入したい方も、ぜひご相談ください。
(出典)
厚生労働省「令和7年度に実施する指定訪問看護事業者等に対する 共同指導に係る取扱いについて」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/tuuti1976-1.pdf
厚生労働省「指定訪問看護事業者等に対する高額を理由とする 都道府県個別指導の取扱いについて」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/tuuti1976-2.pdf




