2回にわたり、訪問看護「共同指導」の厳しい現実について解説してきました。
データに基づく対象選定、そして“災害級”とも言える書類準備。
これらは多くの経営者にとって、頭の痛い問題であることは間違いありません。
しかし、指導を単なる「乗り切るべき厄介事」と捉えるか、それとも「自社の運営を強化する絶好の機会」と捉えるかで、その後の事業の成長は大きく変わってきます。
最終回となる今回は、指導後の流れと、指導に動じない盤石な事業所を創るための考え方についてお伝えします。
指導後に待つ「改善報告」と「返還」の現実
共同指導は、書類を確認して終わりではありません。
指導の結果、運営や請求に問題点が指摘された場合、事業所は「改善報告書」の提出を求められます。
さらに、不適正な請求が認められれば、過誤請求分の「返還」も発生します。
これらは、ただでさえ指導対応で疲弊した現場にとって、さらなる追い打ちとなります。
金銭的な損失はもちろん、「指導を受けた事業所」という事実は、職員の士気や地域の評判にも少なからず影響を与える可能性があります。
「守り」から「攻め」の管理体制へ
では、どうすればこのような事態を避け、指導に動じない強い組織を創ることができるのでしょうか。
答えは、「日頃からの攻めの管理体制」を構築することに尽きます。
1. 記録を「義務」から「武器」へ
日々の記録は、指導のためだけにあるのではありません。それは、提供したケアの質を証明し、多職種と連携し、そして何より利用者とスタッフを守るための「武器」です。記録の標準化や電子化を進め、誰もが質の高い記録を効率的に残せる仕組みを構築することが、攻めの第一歩です。
2. 定期的な「自己点検」の習慣化
指導で指摘される項目の多くは、日頃の自己点検で発見・改善できるものです。月に一度、あるいは四半期に一度でも、第三者の視点で自社の運営や請求業務をチェックする仕組みを取り入れましょう。問題点を早期に発見し、自ら是正する文化を根付かせることが重要です。
3. 「なぜ」を共有する職員教育
「なぜこの記録が必要なのか」「なぜこの算定ルールになっているのか」。その背景にある理念や目的をスタッフ全員が理解・共有することで、業務の質は飛躍的に向上します。やらされ仕事ではなく、一人ひとりがサービスの質と適正な運営を担う当事者であるという意識を育てることが、最強のリスク管理となります。
指導とは、自社の健康状態を客観的に診断してもらう「健康診断」のようなものです.
日頃から健康的な生活(=適正な運営)を心がけていれば、何も恐れる必要はありません。
むしろ、専門家からアドバイスをもらえる貴重な機会と捉えることさえできるのです。
訪問看護ステーションの立ち上げ時から、監査に耐えうる盤石な体制を築きたい方。
請求業務の精度を高め、経営の安定化を図りたい方。運営指導や監査を前に、専門家の視点で総点検を行いたい方。
私たちは、皆様が「守り」から「攻め」の経営へと転換するためのお手伝いをします。
ぜひ、その一歩を私たちと一緒に踏み出しましょう。
(出典)
厚生労働省「令和7年度に実施する指定訪問看護事業者等に対する 共同指導に係る取扱いについて」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/tuuti1976-1.pdf
厚生労働省「指定訪問看護事業者等に対する高額を理由とする 都道府県個別指導の取扱いについて」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/tuuti1976-2.pdf




