2回にわたり、中医協資料から訪問看護を取り巻く「需要増という追い風」と「指導強化という向かい風」を解説してきました。
最終回となる今回は、この変化の時代を乗り越え、地域で選ばれ続けるステーションとなるための具体的な戦略、すなわち「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「質経営」について掘り下げます。
避けては通れない「DX化」の波
もはや「パソコンは苦手で…」と言っていられる時代は終わりました。
国は医療・介護分野のDXを強力に推進しており、訪問看護も例外ではありません。
訪問看護ステーションにおいて、オンライン資格確認とレセプトのオンライン請求は2024年12月には原則義務化されております。
これは単なる事務手続きの効率化に留まりません。将来的には「全国医療情報プラットフォーム」を通じて、地域の医療機関や薬局、介護事業所と利用者の情報をスムーズに連携させることが当たり前になります。
実際に、令和6年度の診療報酬改定では、ICTを活用して多職種と情報連携を行うことを評価する「在宅医療情報連携加算」が新設されました。
これからの時代、デジタルツールを使いこなし、他事業所とスムーズに連携できるかどうかが、ステーションの競争力を大きく左右するのです。
これからの経営指標は「質」
そして、もう一つの重要な鍵が「質経営」への転換です。
前回のコラムで触れた不適切請求の問題は、裏を返せば「サービスの質が問われている」ということです。
これからは、単に訪問件数を増やすのではなく、いかに質の高いケアを提供し、それを証明できるかが重要になります。
その試金石となるのが「機能強化型訪問看護管理療養費」です。
ターミナルケアや重症児への対応、人材育成体制などを評価するこの療養費は、まさに「質経営」を体現したものです。
令和6年度改定では、専門性の高い看護師の配置が要件化されるなど、その基準は年々高まっています。
また、看護師の働きやすさも「質」の重要な要素です。24時間対応体制加算において、看護師の連続勤務回数に制限を設けるなどの負担軽減策を評価する仕組みに改定されたのは、職員の定着なくしてサービスの質は維持できないという国の考えの表れでしょう。
まとめ:未来を創るための経営戦略
3回にわたってお伝えしてきたように、訪問看護業界は大きな変革期にあります。
需要の増大というチャンスを掴むためには、
① DX化に適応し、業務効率と連携力を高めること
② 職員の働きやすさを土台とした、質の高いサービス提供体制を構築すること
この2つが不可欠です。
これらは付け焼き刃の対策で実現できるものではなく、明確なビジョンに基づいた経営戦略が求められます。
・訪問看護ステーションの立ち上げを、未来を見据えた事業計画で成功させたい方。
・日々の請求業務から、その先にある経営全体の質を向上させたい方。
・運営指導・監査を「ただ乗り切る」のではなく、事業改善の機会と捉えたい方。
変化の時代における道標として、私どもの知見がお役に立てるかもしれません。
事業の成長と質の向上を両立させるための戦略づくりを、ぜひ一緒に考えさせていただければ幸いです。
お気軽にお問い合わせください。




 
