「半数が赤字」の非常事態宣言。ハコモノ経営の限界と持続可能性への問い
今回の調査結果で最も衝撃を与えたのは、間違いなく施設系サービスの惨状でした。
特養、老健、介護医療院。これら施設系サービス全体の約45%が赤字経営に陥っています。
「施設を作れば入所希望者が列をなし、経営は安泰」という時代は完全に過去のものとなりました。
光熱費の高騰、食材費の値上がり、そして慢性的な人手不足による稼働制限。
三重苦、四重苦とも言える状況下で、日本の介護を支える「最後の砦(セーフティネット)」が、今まさに決壊しようとしています。
■「赤字45%」が意味するもの
施設系サービスの収支差率は、特養1.4%、老健0.6%、介護医療院3.5%という結果でした。
| サービス種類 | 収支差率 | 赤字事業所割合 | 経営状況の示唆 |
| 介護老人福祉施設(特養) | 1.40% | 約45% | ほぼ利益ゼロに近い状態。物価高の影響が甚大。 |
| 介護老人保健施設(老健) | 0.60% | (施設系平均) | マイナスからは脱却したが、依然として危険水準。 |
| 介護医療院 | 3.50% | 同上 | 医療ニーズ対応で単価は高いが、減少傾向にある。 |
老健は前回のマイナスから辛うじてプラス転換しましたが、0.6%という数字は、大規模な修繕や設備投資が必要な施設経営において「誤差」のような数値です。
さらに深刻なのが「赤字事業所の割合」です。
施設系全体で44.8%。
つまり、2つに1つの施設が赤字を垂れ流しながら運営を続けていることになります。
一般企業であれば、これほどの赤字率は「業界全体の構造不況」と認定され、大規模な再編や撤退が起きるレベルです。
なぜ、これほどまでに収益性が悪化したのでしょうか。
■逃げ場のない「インフレの直撃」
最大の要因は、施設サービス特有のコスト構造にあります。
入居者が24時間365日生活する場である以上、空調や照明を止めることはできません。
食事の提供も必須です。昨今の電気・ガス料金の高騰、そして食材費の値上がりは、施設経営をダイレクトに直撃しました。
一般のホテルや飲食店であれば、コスト増を価格に転嫁(値上げ)できます。
しかし、介護保険施設は公定価格であり、食費や居住費(補足給付)の基準費用額も硬直的です。
「コストは上がるが、価格は上げられない」。
このサンドイッチ状態が、施設の体力を急速に奪っています。
■「ベッドはあるのに人がいない」稼働制限の悲劇
もう一つの要因は、深刻な人材不足による「稼働率の低下」です。
待機者がいるにもかかわらず、職員配置基準を満たすスタッフが確保できないため、空床を作らざるを得ない「稼働制限」を行う施設が増えています。
施設経営は、満床稼働して初めて利益が出るように設計されています。
数床の空きが続くだけで、利益は一瞬で吹き飛びます。
「人手不足」が単なる現場の忙しさだけでなく、「経営上の損失」に直結するフェーズに入ったことが、今回の赤字率の高さに表れています。
■2027年改定の展望:最も手厚い救済が必要な領域
この結果を受け、2027年度改定において施設系サービスは「最重点救済領域」となるはずです。
議論の焦点は以下の通りです。
・基本報酬の大幅な見直し: 物価高騰分を反映したベースアップ。
・人員配置基準の緩和: ICTや見守りセンサーの導入を前提に、少ない人数でも運営可能な基準への変更(4:1配置などの実質化)。
・多床室の室料負担の見直し: 特養の多床室利用者への自己負担導入議論の加速。
地域のセーフティネットを守るために、「経営の安定化」なしには語れない状況まで追い込まれています。




