全6回にわたり、「令和7年度介護事業経営概況調査」の結果を読み解いてきました。
見えてきたのは、全サービス平均で約4割が赤字という、かつてない厳しい現実です。
2027年度の介護報酬改定は、もはや微調整では済みません。日本の介護システムを持続させるための分岐点となります。
最終回となる今回は、この危機を乗り越えるために不可欠な「経営の安定化」と「生産性向上」という、相反するようで実は密接に関わる二つのテーマについて提言します。
■「栄養失調」の介護現場に、まずは輸血を
今回の調査結果は、介護業界全体が深刻な「栄養失調(資金不足)」に陥っていることを証明しました。
物価高騰、人件費の上昇に対し、報酬が追いついていません。
特に訪問系サービスの急激な悪化や、施設系の慢性的な赤字は、現場の自助努力でカバーできる範囲を超えています。
次期改定における最優先事項は、間違いなく「基本報酬の引き上げ(プラス改定)」による経営の安定化です。
「赤字でも頑張れ」という精神論は通用しません。
適切な利益が出て初めて、事業所は職員の賃金を上げ、人が集まり、質の高いケアを提供できます。
国は、この経済の原則を介護分野でも認めるべき時が来ています。
■「お金」だけでは解決しない未来
一方で、報酬さえ上がれば全て解決するかと言えば、答えはNOです。
なぜなら、日本全体の生産年齢人口が急減していく中で、「お金があっても人がいない」時代がすぐそこまで来ているからです。
ここで不可欠になるのが「生産性向上」と「業務効率化」です。
「生産性向上」という言葉にアレルギーを持つ現場の方もいるかもしれません。
「これ以上、忙しく働けと言うのか」と。
しかし、真の生産性向上とは、職員を酷使することではなく、「テクノロジーや仕組みを使って、人がやらなくていい業務を減らすこと」です。
ICTによる記録の自動化、見守りセンサーによる夜勤負担の軽減、ロボット活用・・・
これらを駆使して、「少ない人数でも、質を落とさずにケアできる体制」を作らなければ、いくら報酬が上がっても人手不足倒産は止まりません。
■「安定」と「改革」の両輪を回せ
私が今回の連載を通じて最も伝えたいのは、「経営の安定化(報酬アップ)」と「生産性向上(改革)」はセットであるということです。
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報酬アップなき生産性向上: 原資がない中でICT投資も人材確保もできず、現場が疲弊して終わります。
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生産性向上なき報酬アップ: 一時的に経営は楽になっても、人手不足の波に飲まれ、いずれ立ち行かなくなります。
2027年改定に向けて、我々事業者は「苦しいから助けてくれ」と訴えるだけでなく、「報酬を上げてくれれば、投資をして生産性を高め、地域のインフラを必ず守り抜く」という強い意志と覚悟(コミットメント)を示す必要があります。
■結びに代えて
「赤字37.5%」という数字は、絶望のサインではなく、変革への最後の警鐘です。
このデータを直視し、国、事業者、そして国民全体が「介護のコストと価値」について真剣に向き合うこと。
それが、2027年以降も私たちが安心して老いを迎えられる社会を残すための、唯一の道筋ではないでしょうか。




