ケアマネの未来は変わるか?新補助制度と、その先に求められる「報酬体系」の見直し

皆さん、こんにちは!

 

2025年度、介護業界、特に地域のケアマネジメントを支えるケアマネジャー(以下、ケアマネ)にとって、大きな転換点となる可能性を秘めた新しい動きが始まります。

 

厚生労働省が、ケアマネの確保と業務負担の軽減を目的とした新たな補助制度の創設を打ち出しました。

これは、深刻化する人手不足や、ケアマネが抱える「シャドウワーク」、そしてその専門性に見合ったとは言い難い処遇といった根深い課題に対し、国が具体的な支援策を講じるという強い意志の表れです。

 

今回は、この新制度がもたらす可能性を探ると同時に、現場が本当に求めている抜本的な課題解決、特に処遇改善と報酬体系についても踏み込んで考察します。

 

地域の裁量で活用できる「地域医療介護総合確保基金」の拡充

 

今回の補助制度の大きな特徴は、既存の「地域医療介護総合確保基金」の使い道を拡充し、自治体が主体となって地域の実情に応じた支援策を柔軟に展開できる点にあります。

国が画一的なメニューを用意するのではなく、それぞれの地域が抱える課題に対して、最も効果的な打ち手を選択できるのです。

 

制度の実施主体は都道府県で、国が3分の2、都道府県が3分の1を負担します。

これにより、財政的な基盤を固めながら、地域に根差したきめ細やかな運営支援が可能になります。

厚生労働省が例示した補助対象経費は、「人材確保」「業務負担の軽減」「事業所の経営改善」の3つの柱で構成されています。

 

1. 人材確保:未来のケアマネを地域で支える

 

中山間地域や離島など、人材の確保が困難な地域での採用活動支援や、資格を持ちながら現場を離れている「潜在ケアマネ」のマッチング、定着支援などがメニューに盛り込まれています。

これは、単に頭数を揃えるのではなく、一人ひとりのケアマネが長く安心して働き続けられる環境を地域全体で創り上げていこうという意図がうかがえます。

 

2. 業務負担の軽減:ケアマネが専門業務に集中し、生産性向上へ

 

今回の制度で特に注目すべきは、「シャドウワークに関する相談窓口の設置」や、事務職員の採用支援が明記された点です。

ケアマネが記録に残りづらい非公式な業務や煩雑な事務作業から解放され、本来注力すべき専門業務に集中できる環境が整えば、事業所全体の生産性向上に直結します。

これはサービスの質の向上にもつながる、極めて重要な取り組みです。

 

3. 事業所の経営改善と「処遇改善」の構造的課題

 

補助制度の3本目の柱は「事業所の経営改善」です。

具体的には、「コンサルタント派遣による加算の新規取得、処遇改善、大規模化・共同化の支援」が挙げられています。

専門家の支援によって事業所の収益を改善し、それを職員の処遇に還元していく。この流れを後押しするものであり、大いに歓迎すべき内容です。

 

しかし、ここで私たちは、ケアマネが置かれている極めて重要な構造的課題から目をそらすわけにはいきません。

それは、他の多くの介護サービス事業所が活用している「介護職員処遇改善加算」の対象に、居宅介護支援事業所が含まれていないという事実です。

 

訪問介護や通所介護などでは、この加算が職員の給与に直接上乗せされ、人材確保や定着における重要なインセンティブとなっています。

一方でケアマネは、その制度の恩恵を受けることができません。

結果として、ケアマネの処遇改善は、事業所の持ち出しや経営努力に大きく依存せざるを得ない状況が続いてきました。

これでは、高い専門性と重い責任を担うケアマネの社会的評価が、制度レベルで担保されているとは到底言えません。

 

今回の補助金は、その事業所の「経営努力」を間接的に支援するものであり、非常に有益な一歩です。

しかし、それはあくまで対症療法的な側面も否めません。

現場が真に求めているのは、より直接的かつ抜本的な解決策、すなわち介護保険制度におけるケアマネの基本報酬そのものの引き上げや、ケアマネを対象とした新たな処遇改善加算の創設なのです。

 

まとめ:補助制度を追い風に、抜本的な報酬改定の議論を

 

今回新設される補助制度は、ケアマネと事業者が抱える課題に多角的にアプローチするものであり、経営基盤の強化や生産性向上を実現する絶好の機会です。

共生社会の実現に向け、地域の「住まい」や医療との連携を担うケアマネの役割はますます重要になる中、このチャンスを最大限に活用すべきことは間違いありません。

 

しかし、これがゴールではないことも、私たちは強く認識しておく必要があります。

現場を支えるケアマネが、その専門性と責任にふさわしい評価と処遇を直接的に受けられる仕組み、すなわち基本報酬の引き上げや処遇改善加算の導入といった報酬体系そのものの見直しが不可欠です。

 

補助金という「環境整備」と、報酬改定という「直接評価」。この2つが車の両輪となってはじめて、ケアマネのなり手不足は解消に向かい、介護保険制度の持続可能性は確固たるものになるのではないでしょうか。

 

日々の業務に追われる中で、こうした新しい制度の情報を収集し、自社にとって最適な活用法を見つけ出すのは容易ではありません。

また、将来の報酬改定を見据えた上で、今からどのような経営戦略を描くべきか、専門的な視点が必要になる場面も多いかと存じます。

 

私どもでは、介護事業に特化したコンサルティングを通じて、各事業所様の状況に合わせた最適な運営支援をご提案しております。

今回の補助制度の活用に関するご相談はもちろん、中長期的な経営課題について、どうぞお気軽にお声がけください。

共に、変化の時代を乗り越え、持続可能で質の高い介護の未来を築いていきましょう。