皆様、こんにちは！
地域包括ケアシステムの要として、高齢者の生活を支えるケアマネジャー（以下、ケアマネ）。その専門性を維持・向上させるために不可欠とされる「法定研修」が今、大きな変革の時を迎えようとしています。
厚生労働省が来年度から、この法定研修に用いる全国統一的な講義動画を作成し、オンラインでいつでも受講できる「オンデマンド化」に乗り出すことを発表しました。
この一報に、多くの現場ケアマネが期待と少しの戸惑いを寄せているのではないでしょうか。今回は、この「研修のDX（デジタルトランスフォーメーション）化」がもたらす意味と、私たちが本当に考えるべき課題について掘り下げてみたいと思います。
なぜ今、研修の「オンデマンド化」なのか？深刻化する現場の負担
そもそも、なぜこれほどまでに研修のあり方が問われているのでしょうか。
背景には、現場が抱える深刻な課題があります。
ケアマネの法定研修、特に5年ごとの更新研修は、受講者の経済的・時間的な負担が非常に大きいと長年指摘されてきました。
数日間にわたる研修に参加するためには、高額な受講料に加え、交通費や宿泊費がかかることも少なくありません。
さらに深刻なのは、研修期間中に現場を離れなければならないことです。後任のいない「一人ケアマネ」の事業所も多く、その間の利用者対応をどうするかは常に頭の痛い問題です。
こうした負担の大きさから、資格の更新を諦めてしまうケースも耳にします。
ただでさえ、ケアマネのなり手不足や既存従事者の高齢化は喫緊の課題です。10年以内に担い手が急激に減少すると見込まれる中、専門職としての質を担保するための研修制度が、結果的にケアマネを現場から遠ざける一因になっているとしたら、それは本末転倒と言わざるを得ません。
また、研修内容の質に都道府県ごとの地域格差があるという指摘も、受講者の不満の一因となっていました。今回の国の動きは、こうした現場の悲鳴とも言える声に、ようやく応えようとするものなのです。
国が描く「いつでも・どこでも学べる」新しい研修のカタチ
厚生労働省が描く構想は、全国統一的な講 new text 講義動画をオンラインで配信し、受講者が「いつでも・どこでも・何度でも」学べる環境を整えることです。
このオンデマンド化が実現すれば、多くのメリットが期待できます。
まず、時間的・場所的な制約からの解放です。事業所のパソコンや自宅のスマートフォンから、仕事の合間や都合の良い時間に学習を進めることができます。
これにより、研修のために何日間も職場を空ける必要がなくなり、利用者への支援を継続しながら学びを深めることが可能になります。
次に、経済的負担の軽減です。交通費や宿泊費が不要になるだけでなく、将来的には統一教材の活用による受講料そのもののコスト削減も期待されます。
そして、学習の質の均一化です。国が一元的に質の高い教材を作成することで、どの地域で受講しても一定水準の知識や技術を学ぶことができ、地域格差の是正につながります。
研修のあり方そのものを見直す好機
このオンデマンド化の流れは、単なる「受講方法の変更」に留まりません。
私たちはこれを機に、「そもそもケアマネに必要な研修とは何か」という、より本質的な議論へと進めるべきではないでしょうか。
もちろん、専門職としての質の担保は絶対に必要です。
しかし、その方法は本当に現状のままで良いのでしょうか。
今回の改革は、研修のあり方そのものを見直す絶好の機会です。
例えば、オンデマンドで基礎知識を学び、集合研修ではより実践的な事例検討やグループワークに特化するといった、ハイブリッド型の研修も考えられます。
研修の負担軽減によって生まれる時間は、ケアマネが本来注力すべき業務、すなわち利用者一人ひとりと向き合い、質の高いケアマネジメントを実践するための貴重な資源となります。
提供された資料にもあるように、ケアマネの業務は法定業務以外にも、いわゆる「シャドウワーク」と呼ばれる多岐にわたる業務に圧迫されています。
研修負担の軽減は、こうした業務の整理やICT化の推進といった、より大きな業務効率化に取り組むための第一歩でもあるのです。
まとめ：「学びやすさ」がケアマネの未来を支える
ケアマネ法定研修のオンデマンド化は、深刻化する人材不足と現場の負担増に対する、国からの明確な回答であり、大きな前進であることは間違いありません。
この改革が、多忙な中でも学び続けたいと願うケアマネたちの意欲を削ぐことなく、むしろ後押しする制度となることを強く期待します。
重要なのは、質の担保という大前提を崩さずに、いかに現場の実態に即した柔軟な制度設計ができるかです。
「学びやすさ」は、専門性の向上と直結します。ケアマネジャーが専門職としての誇りを持ち、心身ともに健やかに働き続けられる環境を整えること。
それこそが、超高齢社会における日本の介護の質を支え、地域で暮らす高齢者の安心を守ることに繋がっていくのです。