介護サービス提供体制の再構築に向けた議論の最前線
2025年11月10日に開催された「社会保障審議会介護保険部会」では、2040年に向けた人口動態の変化を見据え、介護サービス提供体制の再構築に関する重要な議論が交わされました。
特に、人口減少が著しい地域と高齢者人口が増加する都市部という、二極化する地域課題に対して、制度的な対応をどう設計するかが焦点となりました。
地域類型に応じた柔軟な制度設計
まず、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3つに類型化し、それぞれの地域特性に応じた制度設計が必要であるとの認識が示されました。
特に中山間・人口減少地域では、サービス需要の減少に加え、事業者の撤退や人材確保の困難さが深刻化しており、サービス提供の維持・確保を前提とした新たな枠組みの導入が求められています。
この枠組みでは、対象地域の特定が重要となり、地域の実情に即した支援策が検討されることになります。
特例サービスとICT活用による体制維持
中山間地域における人員基準の確保が難しい現状を踏まえ、特例介護サービスに新たな類型を設ける案が提示されました。
この新類型では、ICTの活用や同一法人内の連携を前提に、管理職や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和が検討されています。
対象サービスとしては、居宅サービスに加え、地域密着型サービスや施設サービスも含めるかどうかが議論されており、制度の柔軟性と現場の実効性の両立が課題となります。
定額報酬による経営安定化の仕組み
季節による繁閑や移動時間の負担など、経営の不安定要因が多い中山間地域では、訪問介護等における月単位の定額報酬制度(包括的な評価の仕組み)の導入が検討されています。
これは、出来高報酬とは異なる安定的な収入を確保することで、事業者の経営予見性を高め、人材確保にもつなげる狙いがあります。
ただし、利用者間の不公平感やモラルハザードの懸念もあるため、適切なケアマネジメントの担保が不可欠です。
給付から事業への転換という新たな挑戦
さらに、給付による特例の仕組みを活用してもなおサービス維持が困難な地域に対しては、市町村が介護保険財源を活用して事業としてサービスを実施する新類型の導入が検討されています。この仕組みでは、事業者への委託により、個別の利用実績に基づく支払いではなく、事業費として支払うことで、収入の安定化を図ります。
これは、従来の介護保険制度の枠を超えた新たな挑戦であり、自治体の役割と責任が一層問われる制度設計となります。
都市部のニーズに応えるサービス基盤の整備
一方、大都市部では高齢者人口の増加に伴い、多様なニーズに対応したサービス基盤の整備が急務です。
ICTやAI技術を活用し、24時間365日の見守りを前提とした効率的かつ包括的なサービス提供の在り方が検討されています。
また、機能が重複している夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に統合する案も示されており、制度の簡素化とサービスの質向上を目指す動きが見られます。
地域間格差への対応と制度の精緻化
調整交付金の在り方についても、地域ごとの人口動態の変化を踏まえた精緻化が提案されました。
具体的には、年齢区分を現行の3区分から5歳刻みの7区分に変更することで、保険料水準の格差をより公平に調整する仕組みが検討されています。
今回の審議会では、人口減少と介護ニーズの変化という二大課題に対して、地域ごとの実情に応じた多層的な制度設計が求められていることが改めて確認されました。
制度の柔軟性と公平性、そして現場の実効性をどう両立させるか──
今後の議論の行方に、引き続き注目が集まります。
次回は「地域包括ケアシステムの深化-介護予防・日常生活支援総合事業」について取り上げてまいります。
どうぞご期待くださいませ!!
(出典)第128回社会保障審議会介護保険部会(令和7年11月10日)




