
介護人材の確保と定着は、今や介護業界全体の最重要課題です。
厚生労働省が2025年12月12日に開催した「第250回社会保障審議会介護給付費分科会」では、令和8年度介護報酬改定に先立ち、来年度(令和7年度)の臨時改定として6月から処遇改善加算を拡充する方針が示されました。
本コラムでは、処遇改善が将来の介護サービスの持続性にどう貢献するのかを整理し、事業所が今から備えるべき視点を考えてみます。
1. 賃金水準の引き上げが人材確保のカギ
介護分野は慢性的な人材不足に直面しており、その背景には他産業との賃金格差があります。
介護職員の平均給与は、全産業平均と比べて依然として低く、特に若年層や中堅層の流出が深刻です。
今回の報酬改定では、補正予算による一時的な賃上げにとどまらず、令和8年度からの持続的な賃上げの仕組みが検討されています。
また、処遇改善加算の対象職種も拡大され、介護職員だけでなく、看護職員、ケアマネジャー、事務職員など、介護現場を支える多職種が対象となる方向です。
このような取り組みは、単なる給与の底上げにとどまらず、「この職場で働き続けたい」と思える環境づくりにつながります。
2. 生産性向上と業務効率化の両輪で支える
処遇改善は、賃上げだけでは完結しません。
限られた人材で質の高いサービスを提供し続けるためには、業務の効率化と生産性の向上が不可欠です。
たとえば、ケアプランデータ連携システムの導入により、記録や情報共有の手間が軽減され、ケアマネジメントにかけられる時間が増えます。
また、ICTやAI、介護ロボットの活用により、事務作業や身体的負担の軽減が進めば、職員の離職防止にもつながります。
今回の改定では、こうした取り組みを行う事業所に対して、処遇改善加算の上位区分での評価や、特例的な要件緩和が検討されています。
つまり、テクノロジーの導入や業務改善に前向きな事業所ほど、処遇改善の恩恵を受けやすくなる仕組みです。
3. 対象職種の拡大と新たな取得要件
今回の臨時改定では、これまで処遇改善加算の対象外とされてきた居宅介護支援、介護予防支援、訪問看護、訪問リハビリテーションなどのサービスも新たに対象に含まれる見通しです。
これらの事業所には、「加算Ⅳ」に準ずる取得要件が課される予定で、以下の3つの要件が求められます
・キャリアパス要件Ⅰ:職位・職責に応じた任用要件と賃金体系の整備
・キャリアパス要件Ⅱ:資質向上のための目標設定、研修機会の確保、能力評価など
・職場環境等要件:入職促進、キャリアアップ支援、多様な働き方、健康管理、働きがいの醸成などの取り組み(生産性向上は2項目以上)
ただし、これらの要件を満たすには一定の準備期間が必要なため、厚労省は経過措置として「来年度中の対応を誓約すれば、年度当初から加算取得を認める」方針を示しています。
さらに、ケアプランデータ連携システムの導入などに取り組んでいる事業所には、要件の一部を免除する特例措置も検討されています。
4. 小規模事業所への配慮と制度対応への備え
審議会では「小規模な事業所への支援が必要」との声も上がりました。
実際、加算取得や制度対応には事務負担が伴い、特に人員や体制に限りのある事業所では対応が遅れるリスクもあります。
そのため、厚労省は今後、申請手続きの簡素化や支援策の充実についても検討を進める方針です。
事業所としては、制度の動向を正しく把握し、早期に準備を始めることが、加算取得と経営安定のカギとなります。
一方で、加算取得や報酬改定への対応には、事務負担の増加という課題もあります。
特に小規模事業所では、申請や実績報告、要件整備にかかる負担が重く、制度対応が遅れるリスクもあります。
そのため、今回の改定では、生産性向上や協働化に取り組む事業所に対して、要件の一部を緩和する特例措置も検討されています。
たとえば、ICT導入や業務改善の誓約を行えば、初期段階から加算取得が可能になる仕組みです。
こうした制度の動きを正しく理解し、早めに準備を進めることが、加算取得と経営安定のカギとなります。
まとめ:処遇改善は“未来への投資”
介護人材の処遇改善は、単なる賃上げではなく、人材確保・業務効率化・サービスの質向上を同時に実現するための“未来への投資”です。
制度の動向を正しく捉え、事業所としてどのように対応していくかが、今後の経営の明暗を分けることになるでしょう。
「何から手をつければいいか分からない」「ICT導入や加算対応に不安がある」―― そんなときは、ぜひ介護業界に精通した専門家にご相談ください。
制度対応から業務改善、職員定着まで、現場に寄り添った支援で、持続可能な介護経営を一緒に築いていきましょう。
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