介護職員の処遇改善へ──臨時報酬改定の意義と限界、そして本質的な課題

政府は2026年度に臨時の介護報酬改定を実施する方針を固めました。

これは、介護職員の処遇改善を加速させるための異例の対応であり、月内に策定される経済対策に明記される予定です。

年末の予算編成では、具体的な金額や制度設計が検討され、2025年度の補正予算案にも賃上げ支援策が盛り込まれる見通しです。

人材減少と賃金格差──臨時改定の背景

厚生労働省の統計によれば、2023年10月時点の介護職員数は約212万6千人。

前年から約2万9千人減少し、介護保険制度開始以来初めてのマイナスとなりました。

 

背景には、低賃金による人材流出があります。

2024年の介護職員の平均月給(賞与込み)は約30万3千円で、全産業平均より約8万円低い水準。

こうした賃金格差が、若年層や中堅層の離職を招き、現場の人手不足を一層深刻化させています。

 

高市首相も「現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながるよう的確な対応を行う」と述べており、臨時改定はその第一歩と位置づけられています。

処遇改善加算の限界──制度の複雑さと不公平感

介護職員の賃上げ施策として長年活用されてきた「介護職員等処遇改善加算」ですが、現場では手続きの煩雑さが大きな負担となっています。

加算の申請・報告には細かな要件があり、事業所の事務負担は相当なものです。

 

さらに、制度の設計上、「介護職員」に焦点が当てられているため、他職種への配分が限定的です。

たとえば、居宅介護支援事業所のケアマネジャーには一切適用されず、同じ事業所内で働いていても処遇改善の恩恵を受けられないという不公平さが残ります。

 

こうした制度の偏りは、チームケアの実践や職種間の連携にも影響を及ぼしかねません。

本質的な処遇改善とは──加算ではなく「基本報酬」の見直しを

処遇改善は絶対に必要です。

しかし、本来の在り方を考えれば、職員の給与改善は企業の売上向上と利益還元によって実現されるべきものです。

国が加算という形で支援する構造は、短期的な対症療法に過ぎません。

 

つまり、本当に必要なのは「処遇改善加算の上乗せ」ではなく、「基本報酬のアップ」です。

基本報酬が上がれば、事業所の収益構造が安定し、職員への還元も柔軟に行えるようになります。

加算に頼らずとも、事業所の経営努力と工夫によって処遇改善が可能になる──これが持続可能な制度の姿ではないでしょうか。

臨時改定は突破口──だが、制度の再構築が不可欠

2026年度の臨時改定は、介護職員の処遇改善に向けた重要な一歩です。

しかし、それだけでは不十分です。

 

制度の複雑さや不公平感を是正し、介護職員だけでなく、ケアマネジャーや看護師、生活相談員など多職種が等しく評価される仕組みが必要です。

そして何より、基本報酬の見直しによる構造的な改革が求められます。

処遇改善を「加算」から「標準」に変えることで、介護現場の安定と質の向上が実現されるのです。

まとめ:処遇改善の本質を問い直す時

介護職員の賃上げは、介護サービスの質と持続性を左右する重要な課題です。

臨時改定はその突破口となりますが、制度の本質を問い直すことが、次のステージへの鍵です。

 

事業者や職員の皆さんにとっても、制度改定の動向を注視し、専門家と連携しながら、加算に頼らない経営と処遇改善のあり方を模索していくことが求められます。