
近年、在宅で最期を迎えたいというニーズが高まる中、訪問看護師が果たす役割はますます重要になっています。
しかし、在宅での看取りには、医療的な対応だけでなく、感情的・倫理的な葛藤、家族への支援など、さまざまな課題が伴います。
本コラムでは、訪問看護師が“看取り”とどう向き合い、どのような支援を行っているのかを、現場の視点から考えてみたいと思います。
■ 看取りの「準備」は、いつから始まるのか?
在宅での看取り支援は、いきなり始まるものではありません。
むしろ、日々の関わりの中で「その時」に向けた準備が少しずつ進んでいくものです。
たとえば、病状の進行や予後の見通しについて、医師や多職種と連携しながら、利用者やご家族に丁寧に説明すること。
「どこで、どのように最期を迎えたいか」という本人の意向を、日常の会話の中から少しずつ引き出していくこと。
こうした積み重ねが、いざというときの意思決定を支える土台になります。
また、看取りに向けた準備は、医療的なケアだけでなく、環境整備や家族の心構えづくりも含まれます。
「酸素やモルヒネの準備は?」「夜間の対応はどうする?」「家族は何をすればいいのか?」―― こうした不安に寄り添いながら、具体的な支援体制を整えていくことが、訪問看護師の大切な役割です。
■ 訪問看護師が抱える“葛藤”と向き合い方
看取りの場面では、訪問看護師自身もさまざまな感情や葛藤に直面します。
「もっとできることがあったのではないか」「家族の希望と本人の意思が食い違っている」 「急変時にどう対応すべきか迷った」など、正解のない場面に立ち会うことも少なくありません。
こうした葛藤に向き合うためには、チームでの振り返りやスーパービジョンの機会が欠かせません。
一人で抱え込まず、他の職種や同僚と気持ちや判断を共有することで、次の支援に活かすことができます。
また、看取りの経験は、訪問看護師自身の価値観や人生観にも影響を与えることがあります。
「人の最期に立ち会う」という重みを受け止めながらも、そこに“その人らしさ”や“家族とのつながり”が感じられたとき、 看護師としてのやりがいや意味を再確認することもあるのではないでしょうか。
■ 家族への支援と“その後”のケア
在宅看取りにおいて、家族は“ケアの担い手”であり、同時に“支援の対象”でもあります。
特に最期の時間が近づくにつれ、家族の不安や迷いは大きくなります。
「このままでいいのか」「苦しんでいないか」「自分たちの判断は正しかったのか」―― こうした思いに寄り添い、安心して看取りに向き合えるよう支えることが、訪問看護師の大切な役割です。
また、看取り後の“グリーフケア”も見落とせません。
葬儀後の訪問や電話での声かけ、必要に応じた相談機関の紹介など、 「看取りで終わり」ではなく、「その後の心のケア」まで見据えた支援が求められます。
■ まとめ:看取りを“特別なこと”にしないために
在宅での看取りは、決して特別なことではありません。
むしろ、日々のケアの延長線上にある“暮らしの一部”として捉えることが大切です。
訪問看護師は、医療者であると同時に、人生の最終段階を支える伴走者でもあります。
その役割は重く、時に迷いや葛藤もありますが、だからこそ、チームで支え合いながら、 一人ひとりの“その人らしい最期”を支える力になっていけたらと思います。
2026年の報酬改定でも、在宅看取りや看護の役割がどう評価されるかが注目されています。
制度の動向を見据えつつ、現場での実践を言語化し、共有していくことが、これからの訪問看護の価値を高める一歩になるのではないでしょうか。




