
2025年、日本の訪問介護事業者の倒産件数が3年連続で過去最多を更新しました。
東京商工リサーチの調査によると、11月末時点で85件に達し、前年の81件、2023年の67件を上回るペースです。
この数字は、単なる一時的な経営不振ではなく、介護業界が抱える構造的な課題の深刻化を物語っています。
本稿では、倒産データをもとに、訪問介護業界の現状と今後の打開策について考察します。
1. 深刻化する人手不足と賃金の停滞
訪問介護の現場では、ヘルパー不足が慢性化しています。
この人手不足が、利用者の受け入れ制限やサービス縮小を招き、結果として売上不振につながっています。
特に注目すべきは、賃金の伸び悩みです。
2025年度の介護分野の賃上げ率は2.58%にとどまり、全産業平均の5.25%の半分程度。
この水準では、他業種との人材獲得競争に勝つことは難しく、人材流出と採用難の悪循環が続いています。
2. 経営を圧迫する“ダブルパンチ”
倒産の主な原因は、売上不振(83.5%)です。
背景には、ヘルパー不足による稼働率の低下、そして介護報酬のマイナス改定があります。
さらに、人件費・燃料費・光熱費の高騰といった運営コストの上昇が、経営を直撃。
特にガソリン代や介護用品の価格高止まりは、訪問型サービスにとって深刻な打撃です。
このように、「収入は減り、支出は増える」という経営の板挟みが、事業継続を困難にしています。
3. 小規模事業者に集中する倒産リスク
2025年の倒産事業者のうち、従業員10名未満が87.0%、負債1億円未満が89.4%を占めています。
つまり、小・零細規模の事業者が淘汰されているのが現実です。
こうした事業者にとって、ICT導入などの効率化投資は人的にも資金的にも重い負担。
「効率化が必要なのに、効率化のための余力がない」というジレンマに陥っています。
4. 地域別に見る倒産の偏り
倒産件数を地域別に見ると、最も多かったのは近畿地区(27件/31.7%)。 次いで関東(22件)、中部(11件)、九州(9件)と続きます。
都道府県別では大阪府(12件)が最多で、都市部を中心に淘汰の波が広がっていることが分かります。
5. 打開策は「処遇改善」と「効率化支援」
この状況を打開するには、以下の2つの柱が不可欠です。
● 介護従事者の処遇を抜本的に改善する
政府は2025年11月に「医療・介護等支援パッケージ」を発表し、 令和8年度の介護報酬改定において「他職種と遜色のない処遇改善」を掲げています。
また、報酬改定を待たずに緊急的な賃上げ支援を行う方針も示されており、 これらの施策が実効性を持つかが、今後のカギとなります。
● 小規模事業者へのICT導入支援を強化する
業務効率化は避けて通れない課題ですが、導入には人的・資金的支援が必要です。
国や自治体によるIT投資への補助金制度や、導入支援の伴走体制が求められます。
まとめ:構造的課題に向き合うとき
訪問介護業界は今、人手不足・低収益・高コストという三重苦に直面しています。
このままでは、地域の介護インフラを支える小規模事業者が次々と姿を消してしまうかもしれません。
倒産件数の増加は、単なる数字ではなく、現場の悲鳴の表れです。
制度・支援・現場の創意工夫を結集し、持続可能な介護の未来を築くために、今こそ本質的な改革が求められています。




