
2027年度の制度改正に向けた議論が本格化する中、住宅型有料老人ホームに対する規制強化の方向性が明確になってきました。
昨年末に社会保障審議会・介護保険部会がまとめた意見書では、「登録制」や「更新制」の導入、会計の分離、公表義務など、これまでにないレベルの規制強化が提言されています。
本コラムでは、制度改正の背景と今後の見通し、そして事業者が今から備えるべき視点について整理してみたいと思います。
■ なぜ今、住宅型ホームに規制が入るのか?
住宅型有料老人ホームは、介護付きホームと異なり、介護サービスが外付けで提供される仕組みです。 その柔軟性から、近年は中重度の要介護者や医療ニーズの高い高齢者の受け入れ先としても活用されてきました。
しかし一方で、入居者に対して特定の訪問介護や訪問看護事業所の利用を強要する「囲い込み」や、必要以上のサービス提供による「使い切り」など、利用者の意向を軽視した運営が一部で問題視されてきました。
こうした背景を受け、厚生労働省は2023年に専門検討会を設置。 議論を重ねた結果、住宅型ホームの“質”と“透明性”を担保するための制度的な枠組みが必要との結論に至り、今回の意見書に反映される形となりました。
■ 登録制・更新制の導入で何が変わるのか?
今回の意見書では、住宅型ホームのうち、中重度の要介護者や医療的ケアが必要な高齢者を受け入れている施設を対象に、「登録制」の導入が提言されました。
これは、事前に一定の基準を満たした施設のみが運営を認められる“許可制に近い仕組み”であり、事業者にとっては大きな転換点となります。
具体的には、以下のような規定が検討されています
・医療・介護ニーズに対応できる職員配置基準
・バリアフリーや緊急対応設備などのハード面の基準
・虐待防止に関する研修や体制整備の義務化
・関連法人との会計分離と収支の公表義務
・入居契約と介護サービス契約の“紐づけ”の禁止
さらに、運営開始後も一定期間ごとに更新審査を受ける「更新制」も導入される見込みです。
不正行為や行政処分歴がある場合には、新規開設を制限する仕組みも盛り込まれる予定です。
■ 事業者に求められる“これから”の備えとは?
制度改正の方向性が明確になった今、住宅型ホームの事業者は“待ち”の姿勢ではなく、積極的な対応が求められます。
特に以下の3つの視点が重要です。
1. コンプライアンス体制の再構築
「囲い込み」や「使い切り」などの不適切な運営が指摘される中、法令遵守の徹底は最優先事項です。 契約書や運営マニュアルの見直し、職員研修の強化、外部サービスとの関係性の整理など、内部統制の強化が急務です。
2. 透明性のある運営への転換
会計の分離や収支の公表義務が導入されれば、経営の透明性が問われることになります。
関連法人との取引やサービス提供の実態を整理し、説明責任を果たせる体制を整える必要があります。
3. ビジネスモデルの再設計
これまで“自由度の高さ”を強みにしてきた住宅型ホームにとって、規制強化は大きな転換点です。
今後は、医療・介護ニーズの高い高齢者に対応できる体制を整えた上で、地域包括ケアの一翼を担う存在としての価値を再定義する必要があります。
■ まとめ:制度の変化を“チャンス”に変えるために
住宅型有料老人ホームは、今まさに大きな岐路に立たされています。
制度改正の方向性が明確になった今こそ、自施設の運営体制やビジネスモデルを見直す絶好のタイミングです。
「何から手をつければいいのか分からない」 「制度の詳細が固まってから動こうと思っている」 そんな声も聞こえてきますが、制度の具体化が進む前だからこそ、柔軟に対応できる余地があります。
今後の制度設計の動向を注視しつつ、早めに準備を進めることで、変化を“チャンス”に変えることができます。
必要に応じて、制度や運営に詳しい専門家のサポートを受けながら、次の一手を一緒に考えていくことも、選択肢のひとつかもしれません。




