去る2025年8月27日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)。
ここで示される資料は、今後の医療・介護政策の方向性を占う、いわば「未来への羅針盤」といっても過言ではないでしょう。
今回の資料からは、日本の医療提供体制が大きな転換期を迎え、その中で訪問看護が「在宅医療の主役」としての役割をますます強めていく未来が明確に浮かび上がってきました。
3回にわたる本連載の初回は、この中医協資料を基に、訪問看護ステーションを取り巻く「マクロ環境の変化」を読み解いていきます。
もはや止められない「需要増」のビッグウェーブ
資料が示す最も大きなトレンド、それは訪問看護に対する需要の爆発的な増加です。
背景にあるのは、皆様ご存知の通り、日本の急速な高齢化です。
特に注目すべきは、世帯構造の変化です。65歳以上の高齢者のみの世帯が全体の6割を超え、そのうち単独世帯が約3割を占めるという現実は、地域で高齢者を支える仕組みの重要性を物語っています。
さらに、死亡場所も病院から在宅や施設へとシフトしており、2040年に向けて在宅医療の需要は62%も増加すると推計されています。
多くの地域で訪問看護の利用者数がピークを迎えるのは2040年以降とされており、これは訪問看護事業が長期にわたる成長市場であることを意味しています。
実際に、訪問看護の利用者数は医療保険・介護保険ともに右肩上がりで増加を続けており、この大きな波は今後さらに高まっていくでしょう。
競争と大規模化が進む、事業者たちのリアル
この巨大な需要を背景に、訪問看護ステーションの数も年々増加しています。
特に営利法人の新規参入が目立ち、業界全体が活性化している様子がうかがえます。
これはチャンスであると同時に、地域における競争が激化していることも意味します。
また、もう一つのトレンドとして事業所の「大規模化」が挙げられます。
看護職員5人以上の事業所の割合が増加しており、小規模な事業所が淘汰され、より組織力や経営体力のある事業所が中心となっていく可能性を示唆しています。
これからの時代は、ただサービスを提供するだけでなく、地域の中でいかにして選ばれるステーションになるかという、経営戦略が不可欠になってきます。
第1回は、訪問看護を取り巻く大きな環境変化について解説しました。
需要の波に乗り、競争を勝ち抜くためには、よりミクロな視点、すなわち日々の運営における課題をどう乗り越えるかが重要になります。
次回は、増え続ける重症者への対応と、それに伴う国の「視線の変化」という、経営の光と影について掘り下げていきます。
・これから訪問看護ステーションの立ち上げをご検討されている方。
・日々の請求業務に不安やお悩みを抱えている方。
・来るべき運営指導・監査に万全の備えをしておきたい方。
変化の時代におけるステーション運営には、専門的な視点が必要です。
私どもでは、皆様の事業フェーズに合わせた伴走支援を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。




 
