前回のコラムでは、中医協の資料から、訪問看護が長期的な成長市場にあるという大きなトレンドを読み解きました。
今回は、その光の側面である「多様化・重度化するニーズへの対応」と、影の側面である「不適切な請求に対する国の厳しい視線」という、経営の最前線で起こっているリアルな変化について解説します。
【光】重症者・看取りを支える、社会からの期待
在宅医療へのシフトは、訪問看護の役割を大きく変えています。中医協のデータを見ると、その変化は明らかです。
・ターミナルケア(看取り)の増加
・複数名での訪問や、1日に複数回の訪問の増加
・夜間・早朝・深夜、緊急時の訪問の増加
これらはすべて、医療依存度が高い利用者や、人生の最終段階にいる利用者を地域で支えるという、訪問看護への強い期待の表れです。
また、医療保険利用者の主傷病で最も多いのが「精神および行動の障害」であるという事実は、精神科訪問看護の重要性が急速に高まっていることを示しています。
こうした複雑で高度なニーズに応えることこそ、これからの訪問看護ステーションの価値となり、各種加算を通じて経営の安定にも繋がっていきます。
【影】高額請求への厳しい視線と指導・監査の強化
しかし、需要の増加は、残念ながら不適切な運営を招く温床ともなり得ます。
今回の中医協で特に問題視されたのが、一部の事業者による高額な療養費請求の実態です。
資料では、利用者の状態にかかわらず一律に月25日を超えるような頻回な訪問を行っている事例や、年間医療費が極端に高い事業所の存在が指摘されています。
これは、個別のアセスメントに基づかない、事業者都合のサービス提供ではないかという厳しい目が向けられているのです。
この問題に対し、国は明確な手を打ってきました。
「利用者の個別の状況を踏まえずに一律に訪問看護の日数等を定めることは認められない」 という解釈を改めて周知徹底するとともに、2025年4月からは、高額な請求を行う事業所に対する個別指導の選定基準を見直すことを明言しています。
これは、訪問看護業界全体に対する「自浄作用」を促す強いメッセージです。
「知らなかった」では済まされない、コンプライアンス遵守の経営体制が、これまで以上に厳しく問われる時代に突入したと言えるでしょう。
次回は、この光と影を踏まえた上で、これからの訪問看護ステーションが勝ち残っていくために不可欠な「DX化」と「質の高い経営」について、具体的な戦略を解説します。
・適正な請求業務の体制を構築し、返戻や減点をなくしたい方。
・いつ来ても慌てないための、運営指導・監査対策を万全にしたい方。
・訪問看護ステーションの立ち上げ時から、コンプライアンスを徹底したい方。
適正な事業運営は、経営の基盤です。
皆様のステーションが地域から信頼され、持続的に成長するためのお手伝いをさせていただきます。
ぜひ一度、ご相談ください。




 
