地域包括ケアシステムの深化へ──介護予防・認知症施策・総合事業の再構築に向けて

2025年11月10日に開催された「第128回社会保障審議会介護保険部会」では、地域包括ケアシステムのさらなる深化に向けた主要な論点が提示されました。

 

高齢化と人口減少が進む中、地域社会全体で高齢者を支え、尊厳ある自立した生活を継続できる体制の整備が急務となっています。

 

今回は、特に重要とされた3つの論点について、現状の課題と今後の検討の方向性を中心に整理します。

1. 総合事業の充実に向けた取り組み

介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)は、地域の高齢者が住み慣れた場所で安心して暮らし続けるための基盤です。

 

しかし、現状では多くの課題が浮き彫りになっています。

 

・サービス提供の遅れと担い手不足

特に住民主体による訪問型・通所型サービス(活動B)の実施が進まず、約4割の市町村が担い手不足を理由に挙げています。

 

・市町村での見直しの遅れ

令和6年の要綱改正を受けた見直しを実施した市町村はわずか9%。約4分の1は対応予定すら立っていない状況です。

 

・評価体制の課題

事業評価は約7割の市町村で実施されていますが、改善に結びついていないケースが約3割に上ります。

 

・データ連携の制約

ニーズ調査結果が個人情報と紐づかず、他の情報との連携・分析が困難です。

 

・中山間地域での停滞

担い手不足が深刻で、都道府県による伴走支援が求められています。

 

これらの課題に対し、厚労省は以下のような取り組みを推進しています。

 

・多様なサービス・活動の提示と弾力化

・地域の多様な主体の参画促進

・生活支援コーディネーターを中心とした連携体制の構築

・国・都道府県による広域的支援プラットフォームの整備

・効果検証手法の具体化

・活動C(介護予防・自立支援効果の高いサービス)の評価強化

 

地域の実情に応じた柔軟な制度運用と、データに基づく改善サイクルの確立が鍵となります。

2. 介護予防の推進と「通いの場」の整備

介護予防は、要介護状態の重度化を防ぎ、地域での自立生活を支える重要な柱です。

 

特に「通いの場」は、高齢者の社会参加を促し、地域共生社会の実現に寄与する場として注目されています。

 

しかし、中山間・人口減少地域では担い手不足が深刻で、地域での支え合いの仕組みが十分に機能していない現状があります。

 

今後の取り組みとしては、

 

・多機能拠点の整備・推進

介護予防を軸に、障害・子育て・生活困窮など多様な課題に対応する拠点を整備。

 

・モデル事業の実施

住民主体の「通いの場」活動を支援し、地域の支え合いの拠点の在り方を検証する事業を展開。

 

地域の多様な主体が関わることで、介護予防の実効性と持続可能性が高まることが期待されます。

3. 認知症施策の推進と本人・家族の参画

認知症高齢者の増加は、介護保険制度にとって大きな課題です。

 

2040年には認知症高齢者が584万人、MCI高齢者が612万人に達すると推計されており、独居認知症高齢者の割合も増加が見込まれています。

 

現状の課題としては、

 

・地域で共生できる体制の整備不足

・計画策定における本人参画の遅れ

・医療体制の地域差と再構築の必要性

・診断後支援の枠組み未整備

・家族介護者への相談支援体制の不十分さ

 

これらに対し、厚労省は以下の方向性を示しています。

 

・認知症施策推進計画への本人参画の促進

・医療資源の役割確認と連携強化

・介護従事者研修への本人の声の反映

・家族介護者支援事業の再編と新メニューの検討

 

認知症の人本人や家族が制度設計に関与することで、より実効性の高い支援体制が構築されることが期待されます。

地域包括ケアシステムの深化は、単なる制度改正ではなく、地域の暮らしそのものを支える仕組みの再構築です。

 

多様な主体の参画と、本人・家族の声を反映した制度設計が、これからの介護保険制度の質と持続性を左右する鍵となるでしょう。

 

(出典)第128回社会保障審議会介護保険部会(令和7年11月10日)