インフレ時代の「静かなる危機」。守りの経営から脱却する術はあるか
通所介護(デイサービス)の経営状況は、一見すると「凪(なぎ)」のように見えます。
今回の収支差率は6.2%で前回から微減、黒字割合も平均的です。
しかし、この「変化のなさ」こそが、インフレ時代においては最大のリスクとなり得ます。
送迎車両のガソリン代、食事提供の食材費、光熱費・・・
あらゆる経費がじわじわと上がり続ける中、報酬が横ばいであれば、実質的な経営体力は確実に削られていきます。
デイサービスが直面しているのは、派手な崩壊ではなく、真綿で首を絞められるような「静かなる危機」なのです。
■「横ばい」という名の地盤沈下
通所介護の収支差率は6.2%(前年度比▲0.3%)でした。
| 指標 | 令和6年度決算の値 | 対前年度増減 | 経営状況の示唆(改定への影響) |
| 収支差率 | 6.20% | ▲0.3% | 収支差率は平均よりやや高い水準(6.2%)だが、前年度から0.3ポイント減少。減少幅は比較的小さいか。 |
| 黒字事業所割合 | 63.00% | – | 全サービス平均(62.5%)とほぼ同水準。 |
| 収入に対する給与費の割合 | 60.90% | +0.2% | 給与費の割合は60.9%で、増加幅は0.2ポイントと小幅であった。 |
訪問介護のような急落も見られず、数字上は「安定」しているように映ります。
しかし、現場の経営者の方々は「年々、手残りが減っている」と実感されているのではないでしょうか。
全産業的な物価上昇率が数%ある中で、利益率がマイナス成長(▲0.3%)ということは、実質的な価値は目減りしています。
特にデイサービスは、建物(ハコ)と送迎車両を持つ「設備産業」の側面があり、光熱費や燃料費の高騰をダイレクトに受けます。
このコスト増を、公定価格である介護報酬に転嫁できないもどかしさが、この「▲0.3%」に凝縮されています。
■「稼働率」がすべてを決める恐怖
通所介護は典型的な「固定費ビジネス」です。利用者が来ても来なくても、職員の給与や建物の維持費はかかります。
つまり、損益分岐点を超えられるかどうかが全てです。
コロナ禍以降、利用者の外出控えや利用日数の減少が完全には戻りきっていない地域も少なくありません。
そこにきて、わずかなコスト増が重なることで、損益分岐点が上昇しています。
「以前と同じ利用者数なのに、なぜか赤字になる」。そんな現象が各地で起きています。
■生産性向上は「限界」に近い?
給与費割合は60.9%(+0.2%)と、他サービスに比べれば低く抑えられています。
これは、多くの事業所がこれまで涙ぐましい努力で業務効率化を進めてきた結果でしょう。
しかし、これ以上の「乾いた雑巾を絞る」ようなコスト削減には限界があります。
ICT活用やアウトソーシングも進んでいますが、対人援助である以上、人を減らすことにはリスクが伴います。
■2027年改定の展望:科学的介護と大規模化
次期改定において、通所介護に「バラ色の基本報酬アップ」は期待しにくいでしょう。
この「安定した数字」が、逆に現状維持の根拠にされかねないからです。
生き残りの鍵は2つです。 1つは「科学的介護(LIFE)」への完全対応。
成果(アウトカム)を出せる事業所として加算を取り切ること。
もう1つは「規模の拡大」です。
小規模事業所の統廃合を進め、管理コストを下げなければ、このインフレ局面に耐えられません。
2027年は、地域内でのM&Aや連携が、生存戦略の必須条件となるでしょう。




