
「忙しい」「人が足りない」「時間がない」―― 介護現場でよく聞かれる声ですが、その背景には“ムダな業務”が潜んでいることも少なくありません。
そんなときに役立つのが、業務改善の基本フレームワークであるECRSの原則です。
本コラムでは、ECRSを介護現場にどう応用し、業務を“軽くする”かを考えてみます。
1. ECRSとは?介護現場にこそ必要な“業務改善の4ステップ”
ECRSとは、業務を見直す際の4つの視点を示したフレームワークで、以下の頭文字を取ったものです。
E(Eliminate/排除):やめられないか?なくせないか?
C(Combine/結合):まとめられないか?
R(Rearrange/交換):順番を変えられないか?
S(Simplify/簡素化):もっと簡単にできないか?
この順番には意味があり、上から順に効果が高いとされています。
つまり、まずは「やめられることがないか?」から考えるのがポイントです。
介護現場では、記録、申し送り、物品管理、移動、会議など、日々の業務の中に“見直しの余地”がたくさんあります。
ECRSは、そうした業務を「どうすればもっとラクにできるか?」を考えるための道しるべになります。
2. 事例で学ぶ:E・C・R・Sの実践
では、介護現場でECRSをどう活かせるのか、具体的な事例で見てみましょう。
E(排除):やめられないか?
毎朝の申し送りで、全利用者の状態を一人ずつ読み上げていたが、
→ 状態に変化があった人だけを共有する方式に変更。
→ 時間が半分に短縮され、集中力も維持できるように。
C(結合):まとめられないか?
バイタル測定と記録を別々に行っていたが、
→ タブレット端末でその場で記録する方式に統一。
→ 二度手間がなくなり、記録ミスも減少。
R(交換):順番を変えられないか?
入浴介助の前に毎回バイタル測定をしていたが、
→ 混雑を避けるため、時間帯をずらして測定。
→ 利用者の待ち時間が減り、職員の負担も軽減。
S(簡素化):もっと簡単にできないか?
物品の補充チェックを紙で行っていたが、
→ チェックリストをホワイトボードに変更。
→ 誰でも一目で分かり、補充漏れが激減。
このように、ECRSは「今ある業務を疑ってみる」視点を与えてくれます。
3. ECRSをチームで活かすための進め方
ECRSは、個人で考えるだけでなく、チームで共有・実践することが成功のカギです。
以下のようなステップで進めると効果的です。
1「気になる業務」を1つ選ぶ(例:申し送り、記録、移動など)
2現状の流れをホワイトボードや紙に書き出す
3E→C→R→Sの順に「問いかけ」をしてみる
4改善案を出し合い、試してみる
5効果を確認し、定着させる
ポイントは、「完璧を目指さず、まずは1つ変えてみる」こと。 小さな改善の積み重ねが、やがて大きな業務改善につながります。
まとめ:ECRSは“現場の知恵”を引き出すツール
ECRSの原則は、特別な知識やツールがなくても、現場の職員が自ら改善に取り組める“思考の型”です。
「もっとラクにできないか?」という問いをチームで共有することで、職員の主体性や協力意識も高まります。
「業務改善をしたいけど、どこから手をつければいいか分からない」―― そんなときは、介護現場に精通した専門家と一緒に、ECRSの視点で業務を見直してみるのも一つの方法です。
現場の声を活かした改善は、職員の働きやすさとサービスの質、どちらにも良い影響をもたらします。




