
「競合が増えてきた」「利用者がなかなか集まらない」―― 地域で介護事業を展開する中で、こうした声を耳にすることが増えてきました。
制度や報酬の変化だけでなく、地域の人口動態や他事業所の動き、利用者ニーズの変化など、介護事業を取り巻く環境は日々変化しています。
そんな中で、自事業所の立ち位置や戦略を見直すために有効なのが、「5フォース分析」というフレームワークです。
本コラムでは、介護業界における5フォース分析の活用方法と、経営戦略へのヒントを探ります。
1. 5フォース分析とは?
5フォース分析(ファイブフォース分析)は、経営学者マイケル・ポーターが提唱した、業界の競争環境を5つの視点から分析する手法です。
以下の5つの「力(フォース)」が、業界の収益性や競争の激しさを左右するとされています。
1.既存競合の脅威:同じ地域・サービス種別の他事業所との競争
2.新規参入の脅威:新たに参入してくる事業者の存在
3.代替サービスの脅威:訪問看護や家事代行など、代替となるサービスの台頭
4.買い手(利用者)の交渉力:利用者や家族が持つ選択権と影響力
5.供給者(人材・物資)の交渉力:人材や物品の供給元が持つ影響力
この分析を通じて、自事業所の強み・弱みを客観的に把握し、どこに力を入れるべきか、どこにリスクがあるかを見極めることができます。
2. 介護業界における「5つの力」を読み解く
それぞれのフォースを、介護業界の実情に即して見てみましょう。
① 既存競合の脅威
地域には同じようなサービスを提供する事業所が複数存在します。
特に訪問介護や通所介護では、サービスの差別化が難しく、価格競争に陥りやすい傾向があります。
自事業所の強み(例:対応力、職員の質、地域連携)を明確にし、「選ばれる理由」を言語化することが重要です。
② 新規参入の脅威
近年、異業種からの参入や、全国展開する法人の進出も見られます。
新規事業所は設備や人材に投資し、広告展開も積極的なため、既存事業所の利用者や職員が流出するリスクがあります。
地域のニーズを的確に把握し、地元密着型の強みを活かす戦略が求められます。
③ 代替サービスの脅威
訪問看護、家事代行、地域のボランティア活動など、介護保険外のサービスや他制度の支援が、利用者の選択肢として広がっています。
「介護保険サービスだけでは足りない」「もっと柔軟な支援がほしい」といった声に応えるため、自費サービスの導入や他機関との連携がカギになります。
④ 買い手(利用者)の交渉力
利用者や家族は、複数の事業所を比較し、選択する力を持っています。
特に都市部では選択肢が多く、サービスの質や対応力、柔軟性が選ばれる決め手になります。
利用者満足度の向上、情報発信、相談対応力の強化が、競争優位性につながります。
⑤ 供給者(人材・物資)の交渉力
介護業界では、人材の確保が最大の課題です。
職員の採用・定着が困難な状況では、事業の継続そのものが脅かされます。
また、物品やICT機器の導入においても、コストや選定の難しさが経営に影響します。
職場環境の改善や、外部との連携による調達力の強化が求められます。
3. 分析を経営戦略に活かすには?
5フォース分析は、単なる理論ではなく、現場の経営判断に直結する実践的なツールです。
以下のような活用方法が考えられます。
・事業計画や加算取得の戦略立案に活かす
・地域ニーズに応じたサービス展開(例:自費サービス、看取り対応)
・職員定着や採用戦略の見直し
・競合との差別化ポイントの明確化と情報発信
・地域ケア会議や行政との連携強化によるネットワーク構築
分析結果をもとに、「自事業所らしさ」を活かした戦略を立てることが、地域で選ばれ続けるための第一歩です。
まとめ:変化の時代に、戦略的な視点を
介護業界は、制度・人口・ニーズの変化が激しい時代に突入しています。
そんな中で、「なんとなくの経営」から「戦略的な経営」へと舵を切ることが、これからの事業継続に欠かせません。
5フォース分析は、複雑な環境を整理し、経営の意思決定を支える強力なツールです。
「自分の事業所は、どんな力にさらされているのか?」「どこに強みがあり、どこにリスクがあるのか?」―― そんな問いを立てることから、次の一手が見えてきます。
「分析のやり方が分からない」「自事業所の強みを言語化したい」 そんなときは、介護業界に精通した専門家と一緒に、戦略を描いてみませんか?
地域に根ざし、選ばれ続ける事業所づくりを、今こそ始めましょう。




