令和7年度補正予算案にみる介護分野の重点施策 〜賃上げ・テクノロジー導入・訪問介護支援など、2721億円の支援策を読み解く〜

令和7年度補正予算案において、厚生労働省は医療・介護・福祉分野の支援を柱とする「医療・介護等支援パッケージ」を打ち出しました。

中でも介護分野には、総額2,721億円という大規模な予算が計上され、現場の人材確保やサービス継続、テクノロジー導入など、喫緊の課題に対応する多角的な支援策が盛り込まれています。

 

本コラムでは、介護分野における主な施策を4つの柱に沿って整理し、現場にとっての意味や今後の展望について考察します。

1. 介護職員の賃上げと職場環境改善への緊急支援(1,920億円)

介護人材の確保と定着は、地域包括ケアシステムの持続可能性を左右する最重要課題のひとつです。

今回の補正予算では、令和8年度の介護報酬改定を待たずに、月1万円の賃上げ支援を令和7年12月から令和8年5月までの6ヶ月間実施する方針が示されました。

 

さらに、生産性向上や協働化に取り組む事業所には月0.5万円の上乗せ支援、職場環境改善に取り組む事業者には月0.4万円相当の支援が行われるなど、処遇改善の多層的な支援が特徴です。

このような緊急的な賃上げ施策は、他職種との処遇格差を埋め、人材流出を防ぐための現実的な一手といえるでしょう。

2. サービス継続のための物価・災害対応支援(510億円)

物価高騰や災害リスクが高まる中、介護サービスの安定提供を支える支援も充実しています。

訪問・送迎にかかる経費や、災害時の備蓄品・発電機の購入費用、さらには介護保険施設における食事提供の継続支援(1人あたり最大1.8万円)など、現場の実情に即した支援が盛り込まれています。

 

特に、定員1人あたり6千円の備品補助は、災害時の備えとして重要な意味を持ちます。

3. 介護テクノロジー導入と経営改善の推進(220億円)

介護現場の生産性向上を図るため、介護記録ソフトやICT環境整備(Wi-Fi等)の導入支援が強化されます。

これにより、記録業務の効率化や情報共有の迅速化が期待されます。

 

また、小規模事業者を含むグループによる経営の協働化や職場環境改善への支援、福祉医療機構(WAM)による経営分析支援など、経営基盤の強化にも重点が置かれています。

都道府県による伴走支援の強化も盛り込まれており、地域全体での底上げが図られます。

4. 訪問介護・ケアマネジメント体制の確保(71億円)

人手不足や燃料費高騰に直面する訪問介護事業所に対しては、同行支援やサテライト設置支援、中山間地域での多機能化支援など、柔軟な支援策が講じられます。

また、ケアマネジャーの高齢化や人材不足に対応するため、人材確保・タスクシフト・広報・研修のオンライン化など、提供体制の維持に向けた多面的な支援が実施されます。

人材確保・育成・定着に向けた基盤整備も

介護福祉士修学資金の貸付原資の積み増しや、外国人介護人材の受け入れ・定着支援、地域における人材確保のプラットフォーム構築支援など、中長期的な人材戦略も同時に進められます。

これらの施策は、単なる「補正予算」ではなく、将来を見据えた構造的な支援の一環といえるでしょう。

まとめ:現場に届く支援へ、今後の実行力に注目

今回の補正予算案は、介護現場の喫緊の課題に対して、的確かつ多面的な支援を講じようとする意欲的な内容となっています。

ただし、重要なのは「実行力」です。 現場にとって本当に使いやすく、効果のある支援となるかどうかは、今後の制度設計や運用次第です。

経営者・管理者としては、これらの支援策を正しく理解し、自事業所にとっての活用可能性を見極める視点が求められます。

今後も最新情報を注視しながら、現場に届く支援を一緒に考えていきましょう。

 

【参考URL】

令和7年度補正予算案の主要施策集(厚生労働省)