
2026年度の診療報酬改定に向けた議論が大詰めを迎える中、12月24日、改定率が正式に決定しました。
本体部分は2026年度が2.41%、2027年度が3.77%、平均で3.09%の引上げとなり、薬価・材料価格の引下げ(▲0.87%)を差し引いたネット改定率は+2.22%。
これは2014年度以来、実に12年ぶりのプラス改定となります。
今回の改定は、物価・人件費の高騰や人手不足といった医療現場の厳しい経営環境を背景に、医療機関の持続可能性をどう確保するかが大きな焦点となりました。
■ 改定率の内訳とその意味
改定財源3.09%の内訳は以下の通りです
賃上げ分:1.70%
物価対応分:0.76%(うち0.62%は2026年度以降の物価上昇に対応)
食費・光熱水費分:0.09%
経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分:0.44%
効率化によるマイナス調整:▲0.15%
通常改定分:0.25%
特に注目すべきは、物価対応分の0.62%が特別項目として診療報酬に設定され、病院や診療所の規模に応じて傾斜配分される点です。
この結果、病院では0.49%、医科診療所では0.10%のプラス配分となり、施設ごとの経営実態に即した対応が図られます。
■ 基本方針に示された4つの視点
12月8日に開催された社会保障審議会医療部会では、2026年度改定に向けた基本方針案が了承されました。 その中で示された4つの基本視点は以下の通りです
1.物価や賃金、人手不足などの環境変化への対応【重点課題】
2・2040年を見据えた医療機能の分化・連携と地域包括ケアの推進
3.安心・安全で質の高い医療の推進
4.医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
特に1点目の「重点課題」では、医療従事者の人材確保や業務負担軽減、物件費の高騰への対応が明確に位置づけられています。
これは、現場の声を反映した実効性ある改定を目指す姿勢の表れといえるでしょう。
■ 訪問診療・訪問看護への影響は?
今回の改定方針では、2040年を見据えた地域医療体制の構築が重要なテーマとされています。
その中で、訪問診療については「地域における医療の確保」という文脈で、今後の評価見直しの対象となる可能性が高まっています。
また、効率化の一環として、長期処方やリフィル処方の推進、後発医薬品の使用促進などが盛り込まれており、これらが在宅医療の提供体制や報酬体系にどう影響するかも注目されます。
訪問看護については、地域医療を支える存在として欠かせないサービスであると、引き続き重要視されています。
ですので、それを踏まえた報酬設計となると思われる一方で、近年叫ばれている同一建物(住宅型有料老人ホームなど)居住者への訪問や、精神科訪問看護のサービス提供が過剰となっていることを問題視し、社会保障費の適正化という名のもとで見直される可能性が高いといえます。
物価・人件費の上昇は、訪問診療クリニック等の経営にも直結する課題です。
今回の改定では、こうした現場の実情に一定の配慮がなされた形ですが、今後の具体的な点数設定や要件の見直しによって、実際の影響が大きく変わる可能性があります。
■ 今後のスケジュールと実務への備え
診療報酬と材料価格の改定は2026年6月、薬価改定は同年4月に施行される予定です。
今後は、基本方針の正式決定を経て、個別項目の点数設定や要件の詳細が議論されていきます。
医療機関や在宅医療事業者にとっては、
・どの項目がどのように見直されるのか
・自院の収益構造にどのような影響があるのか
・人材確保や業務改善にどうつなげるか といった視点で、早めの情報収集と対応準備が求められます。
■ まとめ:12年ぶりのプラス改定、その先にあるもの
2026年度診療報酬改定は、12年ぶりのネットプラス改定となりました。
これは、医療現場の厳しい経営環境に対する一定の配慮と、持続可能な医療提供体制の構築に向けた一歩といえます。
しかし、真の課題はこれからです。 基本方針に示された方向性をどう具体化し、現場にとって実効性ある制度設計に落とし込めるか。
そして、在宅医療や地域医療の現場が、変化にどう備え、どう適応していくかが問われています。
今後の議論の行方を注視しつつ、現場の声を届け、制度と実務の橋渡しを進めていくことが求められています。




