
2026年の診療報酬・介護報酬改定を控え、訪問看護の現場でも「処遇改善」や「賃上げ」が大きなテーマとなっています。
人材確保がますます難しくなる中で、職員のモチベーションや定着率を高めるためにも、賃金の引き上げは避けて通れない課題です。
しかし、「報酬が上がっても、現場の給与にどう反映すればいいのか分からない」「そもそも財源が足りない」といった声も多く聞かれます。
本コラムでは、訪問看護における“賃上げ”を実現するための視点と取り組みについて、制度と現場の両面から整理してみたいと思います。
■ 賃上げの背景と制度の動き
訪問看護を含む介護・医療分野では、慢性的な人材不足が続いています。
特に若年層や中堅層の看護師が、より高待遇の病院や他業種へ流出するケースも少なくありません。
こうした背景から、国としても処遇改善や賃上げを重要な政策課題と位置づけており、2026年の診療報酬・介護報酬改定においても、処遇改善に向けた対応が検討されています。
現時点では詳細は明らかになっていませんが、「訪問看護師を含む職種の処遇改善に向けた方向性」が示されており、 今後、基本報酬や加算の見直し、補助金の活用などが議論されていく見込みです。
ただし、制度の動きを待つだけでは、現場の課題は解決しません。
限られた資源の中でも、できることから取り組む姿勢が、結果として“賃上げの実現”につながっていきます。
■ 現場でできる“賃上げの土台づくり”
賃上げを実現するには、まず「原資をどう確保するか」が大きなポイントです。
そのためには、日々の業務の中で“収益性”と“効率性”を意識した運営が求められます。
たとえば、生産性の向上は重要なテーマです。 記録業務のICT化や音声入力の活用、訪問ルートの最適化など、業務の無駄を減らすことで、 同じ時間でもより多くの訪問やケアが可能になります。
また、稼働率の見直しも効果的です。 訪問件数や時間帯のバランスを見直し、スタッフの負担を軽減しながらも、効率的なスケジュールを組むことで、 結果的に収益の安定化につながります。
さらに、加算の取得戦略も見逃せません。 特別管理加算、ターミナルケア加算、退院時共同指導料など、訪問看護における加算は多岐にわたります。
対象者の把握や算定要件の確認、記録の整備などを徹底することで、適切な報酬を確保することが可能です。
そして、業務の役割分担も重要です。
看護師が本来の業務に集中できるよう、事務職やリハ職との連携を強化し、業務の効率化を図ることで、 限られた人員でも質の高いサービス提供が可能になります。
■ 賃上げを“定着”につなげるために
仮に賃上げが実現したとしても、それが一時的なもので終わってしまっては意味がありません。
大切なのは、「賃上げをきっかけに、働き続けたい職場づくりにつなげること」です。
まずは、給与体系の見直しが必要です。
職位や経験年数、スキルに応じた明確な賃金テーブルを整備し、評価の基準を可視化することで、 職員の納得感やモチベーションの向上につながります。
また、キャリアパスの整備も重要です。
「このステーションで働き続ければ、どんな成長ができるのか」「どんな役割を担えるのか」といった将来像を描けることが、 中長期的な定着に直結します。
さらに、賃上げだけに頼らず、“働きがい”のある職場づくりも欠かせません。
職員同士の信頼関係、意見を言いやすい風土、学びの機会、チームでの達成感―― こうした要素がそろってこそ、賃金以上の満足感が生まれます。
最後に、取り組みの“見える化”も大切です。
「うちはこういう工夫で賃上げを実現しています」「職員の声を反映しています」といった情報を、 採用活動や地域への発信に活かすことで、採用力や信頼性の向上にもつながります。
■ まとめ:制度と現場、両輪で進める“持続可能な賃上げ”
訪問看護における賃上げは、制度の追い風を活かしつつ、現場での工夫と努力を積み重ねることで、初めて実現できるものです。
報酬改定や補助金の動向を注視しながらも、今できることに目を向け、チームで取り組みを進めていくことが求められます。
「賃上げ」はゴールではなく、あくまで“より良い職場づくり”のスタートライン。
職員が安心して働き続けられる環境を整えることが、結果としてサービスの質を高め、地域から選ばれるステーションづくりにつながっていきます。




