
「とにかく毎日忙しい」―― 介護現場でよく聞かれるこの言葉。
しかし、その“忙しさ”の中身を丁寧に見ていくと、必ずしもすべてが「価値ある仕事」ではないことに気づかされます。
本稿では、介護業界の生産性向上を考える第一歩として、現場の非効率の正体とその背景を整理し、“見える化”と“仕分け”の視点から改善のヒントを探ります。
■ 属人化が生む“仕事の偏り”
介護現場では、特定の職員に業務が集中する「属人化」が慢性化しています。
「この人にしかできない」「あの人がいないと回らない」といった状況は、業務のブラックボックス化を招き、チーム全体の生産性を下げる要因となります。
属人化の背景には、マニュアルの未整備やOJTの偏り、業務の可視化不足などがあり、結果として「できる人が抱え込む」構造が生まれがちです。
■ シャドウワークが“本来のケア”を圧迫する
近年、ケアマネジャーや介護職の間で問題視されているのが「シャドウワーク(法定外業務)」の増加です。
たとえば、利用者の家族対応、行政手続きの代行、安否確認、送迎の調整など、本来の業務範囲を超えた“見えにくい仕事”が日常的に発生しています。
これらは一見「現場の柔軟な対応」として評価されがちですが、積み重なることで職員の負担を増やし、ケアの質や安全性に影響を及ぼすリスクもあります。
■ 情報連携の壁が“時間のロス”を生む
多職種連携が求められる介護現場において、情報共有の手段が電話やFAXに依存しているケースは少なくありません。
「担当者が不在で連絡がつかない」「同じ内容を複数の事業所に繰り返し伝える必要がある」といった状況は、貴重な時間を奪う非効率の温床です。
また、記録の二重入力や、紙ベースの情報管理による転記ミス・確認漏れも、業務の質とスピードを低下させる要因となっています。
■ 「忙しい=価値ある仕事」ではないという視点
介護業界では、「忙しいこと」が“がんばっている証”とされがちです。
しかし、忙しさの中に非効率や無駄が含まれているとすれば、それは本来の目的である「質の高いケア」から遠ざかる結果にもなりかねません。
「忙しさの中身を見直す」「やらなくてもいいことをやめる」ことは、決して手を抜くことではなく、“本当に必要なことに集中する”ための前向きな選択です。
■ 生産性向上の第一歩は“見える化”と“仕分け”から
では、どうすれば現場の非効率を改善できるのでしょうか。 その第一歩は、業務の“見える化”と“仕分け”です。
・誰が、いつ、どんな業務をしているのかを可視化する
・法定業務/任意業務/シャドウワークを分類する
・業務の目的と価値を問い直す
こうしたプロセスを通じて、「やるべきこと」「やらなくていいこと」「仕組みで解決できること」を整理することができます。
■ まとめ:非効率の“正体”を知ることが、変革の第一歩
介護現場の生産性向上は、「もっと頑張る」ことではなく、「頑張り方を見直す」ことから始まります。
属人化、シャドウワーク、情報連携の壁――これらの“忙しさの正体”を見極め、業務の見える化と仕分けを進めることで、現場に“余白”と“選択肢”が生まれます。
次回は、こうした余白をどう活かすか――ICTや介護DXの本質的な活用について、現場目線で考えてみたいと思います。




