皆様、こんにちは。
先日、来年度からの最低賃金が全国平均で過去最大の引き上げとなる方針が示されました。
労働者の生活安定を目的としたこの動きは、社会全体としては歓迎すべきニュースです。
しかし、私たち介護経営の現場にとっては、単純に喜べる話ではないかもしれません。
「介護人材政策研究会」が公表した最新の調査では、実に7割以上の介護事業者がこの引き上げに懸念を示していることが明らかになりました。
今回の記事では、なぜ介護現場がこれほど強い不安を抱いているのか、その具体的な理由を掘り下げるとともに、処遇改善と事業継続の狭間で揺れる業界の現状と今後の展望について解説します。
なぜ? 介護事業者が懸念を示す3つの理由
調査で明らかになった事業者の懸念、その理由は大きく3つに集約されます。
1. 賃上げ原資が確保できない(84.3%)
これが最大の理由です。介護事業の収入は公定価格である介護報酬で決まっているため、最低賃金の上昇を、現行の介護報酬で賄うことは事実上不可能と言えます。これに加えて、高騰を続けるエネルギーコストや物価高が重なる「トリプルパンチ」となって経営を圧迫しています。もちろん、現場を支える職員の生活を考えれば、賃金が上がることは喜ばしい話であることは言うまでもありません。しかし、その原資を事業者が一方的に負担するには限界があるのです。
2. 人材市場での競争力がさらに失われる(57.4%)
ただでさえ深刻な人手不足に悩む介護業界。今回の引き上げにより他産業との賃金格差がさらに広がり、人材確保が一層困難になるという懸念です。
3. 「年収の壁」による就労控え(49.6%)
時給アップが、皮肉にも労働力の減少を招く可能性があります。
いわゆる「年収の壁」を意識するパート職員が就労時間を減らす「働き控え」を選択するケースで、特に訪問介護や通所介護の現場にとって深刻な問題です。
求められる「国の支援」と「事業所の努力」
この苦境を乗り越えるため、現場が何を求めているのか。 調査では、実に97.4%の事業者が「介護報酬の引き上げ」が必要だと回答しており、これが国の支援策として最も強く望まれていることは明白です。
中間年改定といった異例の措置を求める声が上がるほど、状況は切迫しています。
しかし、国の対応を待つだけでなく、私たち事業者自身にも最大限の努力が求められます。
外部環境がいかに厳しくとも、顧客を増やすこと、稼働率を上げること、専門性の高いサービスを提供し加算を算定すること、無駄なコストを削減すること、そして生産性向上を図ることは、持続可能な経営を行う上での至上命題です。
とはいえ、日々の業務に追われる中で、これら全ての経営課題に的確に対応していくのは容易なことではありません。特に、複雑な制度を理解し、的確な加算取得や生産性向上に繋げるには専門的な知識やノウハウが必要となります。
もし、こうした経営改善の取り組みにおいて、「何から手をつければ良いかわからない」「専門家の客観的なアドバイスが欲しい」とお悩みでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
皆様の事業所が厳しい時代を乗り越え、地域に必要とされ続けるための一助となれれば幸いです。
(参考)
厚生労働省プレスリリース(令和7年8月4日)
令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001531866.pdf




 
