
2026年(令和8年)度、介護報酬の異例の「期中改定」が実施されます。
通常3年に1度の改定サイクルを待たず、政府が緊急的に実施を決定した今回の改定は、介護業界にとって大きな転換点となる内容です。
本コラムでは、令和8年1月16日に開催された「第253回社会保障審議会介護給付費分科会」の資料をもとに、改定の背景とポイントを整理し、経営者・管理者が今から準備すべき実務対応について解説します。
1. 異例の「期中改定」が示す、政府の本気度
今回の改定は、政府が掲げる「強い経済」の実現に向けた緊急経済対策の一環として位置づけられています。
通常であれば令和9年度に予定されていた定期改定を待たず、令和8年6月からの前倒し実施が決定されました。
🔹 改定率は+2.03%、国費518億円規模
・処遇改善分:+1.95%
・食費基準費用額の引上げ分:+0.09%
この数字が示すのは、単なる報酬の微調整ではなく、人材確保と経営安定化を両立させるための本格的な支援策であるということです。
2. 「処遇改善」のルールが大きく変わる
今回の改定の最大のポイントは、処遇改善加算の対象拡大と新体系の導入です。

🔸 対象職種の拡大:「介護職員」から「介護従事者」へ
これまで処遇改善加算の対象は「介護職員」に限定されていましたが、令和8年度からは看護師、リハビリ職、ケアマネジャー、相談員などを含む「介護従事者」全体が対象となります。
🔸 新たに加算が導入されるサービス
・訪問看護(加算率1.8%)
・訪問リハビリテーション(1.5%)
・居宅介護支援・介護予防支援(2.1%)
これにより、これまで対象外だったサービスにも処遇改善の恩恵が広がります。
🔸 賃上げの内訳と最大額
・ベースアップ分:月1.0万円(3.3%)
・上乗せ分(生産性向上・協働化):月0.7万円(2.4%)
・定期昇給分:月0.2万円
合計で最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが可能となります。
3. 「満額加算」のカギはDXと生産性向上
最大の賃上げを実現するには、新設された上位区分(加算I・ロ、II・ロ)の取得が必要です。
この取得には、「令和8年度特例要件」のクリアが求められます。
✅ 訪問・通所系サービス
・ケアプランデータ連携システムへの加入と実績報告が必須。
✅ 施設系サービス
・生産性向上推進体制加算(IまたはII)の取得が条件。
なお、申請時点では「年度内に対応する旨の誓約」で算定可能とされており、“走りながら整備する”ことも可能です。
💡 コンサルタント視点の提言
この要件は、国からの明確なメッセージです。
「賃金を上げたければ、ICT活用や業務効率化を進めてください」という方向性が打ち出されています。
未対応の事業所にとっては、ICT導入や業務フローの見直しが急務となります。
4. 食費基準額の見直しと利用者負担への影響
物価高騰への対応として、介護保険施設等の食費(基準費用額)が1日100円引き上げられます。

🔸 改定内容(令和8年8月~)
・現行:1,445円/日 → 改定後:1,545円/日
🔸 利用者負担限度額の変更(所得区分別)
・第1・2段階:据え置き(300円・390円)
・第3段階①:+30円(680円)
・第3段階②:+60円(1,420円)
・第4段階(基準費用額):+100円(1,545円)
低所得者への配慮もなされているものの、一部利用者には実質的な負担増となるため、丁寧な説明が求められます。
まとめ:この改定は「制度の転換点」
今回の期中改定は、単なる報酬アップではありません。
「処遇改善の拡大」と「DX・生産性向上の推進」がセットになった、制度の大きな転換点です。
令和9年度の本改定を見据え、今から体制整備を進めることが、 「人材確保」と「経営の持続可能性」を両立させるカギとなります。
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