ICTは“人を減らす道具”ではない|介護DXの本質と可能性

「ICTを入れたら、人がいらなくなるのでは?」 そんな不安の声が、介護現場では今も根強く聞かれます。

しかし、ICTや介護DXの本質は“人を減らす”ことではなく、“人にしかできない仕事に集中する”ための環境づくりにあります。

 

本稿では、ICT導入に対する誤解とその背景、そして現場での成功事例をもとに、介護DXの本質と可能性について考えてみます。

■ ICT導入に対する“誤解”と“抵抗感”

介護現場にICTを導入しようとすると、「現場が混乱するのでは」「高齢者には難しいのでは」「結局、職員の負担が増えるのでは」といった懸念が挙がることがあります。

特に、「人手不足だからICTを入れる=人を減らすための道具」という誤解は根強く、現場の不安を助長しています。

このような誤解を解くためには、ICTの目的を明確にし、現場と一緒に導入プロセスを進めることが不可欠です。

■ 成功事例に学ぶ「人に向き合う時間の創出」

実際にICTを活用している現場では、「記録の時間が短縮された」「情報共有がスムーズになった」「夜勤中の安心感が増した」といった声が多く聞かれます。

 

たとえば、

 

・音声入力による記録の効率化

・見守りセンサーによる夜間巡視の負担軽減

・クラウド型の情報共有ツールによる多職種連携の迅速化

 

これらの取り組みによって、「人に向き合う時間」が生まれ、ケアの質が向上したという報告もあります。

ICTは、単なる“効率化”ではなく、“本来のケア”を取り戻すための手段なのです。

■ ケアの質と効率を両立するための視点

介護現場におけるICT活用は、「効率化」と「ケアの質」のどちらかを選ぶものではありません。

むしろ、両者を両立させるための“仕組み”として捉えることが重要です。

 

・記録や連絡などの“間接業務”をICTで効率化

・空いた時間を“直接ケア”や“対話”に充てる

・データを活用して“気づき”や“予防”につなげる

 

このように、ICTは「人を減らす」のではなく、「人の力を最大限に活かす」ための土台となります。

■ 現場に根づくための“導入の工夫”

ICTを現場に定着させるためには、いきなり全体に広げるのではなく、小さく始めて、チームで育てることが効果的です。

 

・まずは1ユニットや1業務からトライアル導入

・現場の声を聞きながら改善を重ねる

・ICTリーダーや相談役を配置し、安心感をつくる

 

こうしたプロセスを通じて、現場の理解と納得が深まり、「使わされるICT」から「使いこなすICT」へと変化していきます。

■ まとめ:ICTは“人間らしさ”を取り戻す道具

介護DXの本質は、「人にしかできない仕事に集中できる環境をつくること」にあります。

記録や連絡、見守りといった業務をICTで支えながら、職員が“対話”や“観察”といった本質的なケアに時間を使えるようになること。 それこそが、介護の質と生産性を両立させる鍵です。

 

次回は、こうした仕組みを支える“人づくり”に焦点を当て、教育・定着・チーム体制の工夫について考えてみたいと思います。