介護業界の未来を拓く「テレワーク推進」の現在地と課題~令和6年度改定調査から見えたこと~

介護コンサルタントとして、全国の居宅介護支援事業所やケアマネジャーの皆様と接する中で、近年最も強く感じる課題の一つが「多様な働き方の実現」です。

特にテレワークは、人材不足が慢性化する当業界において、離職を防ぎ、新たな人材を確保するための重要なカギになると私は確信しています。

今回は、最新の「居宅介護支援及び介護予防支援における令和6年度介護報酬改定による影響等に関する調査研究事業 報告書」のデータに基づき、ケアマネジメント現場におけるテレワークの現状と課題、そして推進に向けた提言をお伝えします。

■ テレワーク導入の現状:いまだ少数派の厳しい現実

まず、現状の導入割合を見てみましょう。

事業所向けの調査によると、介護支援専門員のテレワーク勤務を「認めている」事業所は30.1%にとどまり、「認めていない」事業所が68.0%と依然として多数派を占めています。

また、テレワークを認めている事業所であっても、その実施頻度は「不定期的に実施」が66.7%と大半を占めており、日常的な働き方として定着しているとは言い難い状況です。

さらに、ケアマネジャー個人に対する調査でも、テレワークを実施しなかった理由として「事業所でテレワークが認められていないため」(38.7%)が最も多く挙げられています。

現場の意向以前に、事業所側の方針が大きな壁となっていることが浮き彫りになっています。

■ テレワークがもたらす確かなメリット

一方で、実際にテレワークを導入している事業所やケアマネジャーからは、確かな効果が報告されています。

事業所側が感じるメリットとしては、「ワークライフバランスが実現する(多様な働き方)」(65.0%)、「生産性/効率性が向上する」(37.8%)、「事業継続性が確保される」(32.0%)などが上位に挙がっています。

また、ケアマネジャー個人が感じる効果としても、「通勤時間や移動時間を削減できた」(61.1%)、「生産性/効率性が向上した」(52.5%)、「精神的な余裕が生まれた」(46.3%)といった声が多く聞かれます。

ケアマネジャーは他職種よりも平均年齢が高く、自身の育児やご家族の介護と仕事を両立している方も少なくありません。

ヒアリング調査でも「自宅のほうが事務作業に集中できる」といった声や、職員の家族が感染症にかかった場合に業務を休まず対応できたという意見もありました。

テレワークは、職員の心身の負担を軽減し、業務効率を高める強力なツールなのです。

■ 推進を阻む壁:環境整備と意識改革の必要性

では、なぜ導入が進まないのでしょうか。

事業所がテレワークを認めていない理由のトップは、「テレワークのための環境が整っていない」(52.0%)です。

次いで「勤怠/タスク管理が難しい」(35.2%)、「貴事業所の方針である」(35.1%)、「セキュリティリスクが高まる」(32.4%)と続きます。

確かに、個人情報の取り扱いやICT機器の導入コスト、通信環境の整備は容易ではありません。

ケアマネジャー個人の調査でも「テレワークを実施するためのICT環境が整備されていないため」(28.1%)という理由が目立ちました。

しかし、これらは決して乗り越えられない壁ではありません。

■ 介護コンサルタントからの提言

私としては、この業界において可能な限りテレワークを推進してほしいと強く願っています。

そのために不可欠なのは、経営層・管理者層の「意識改革」と「積極的なICT投資」です。

「対面でなければ仕事ができない」「管理の目が行き届かない」といった固定観念から脱却する必要があります。

調査の検討委員会でも指摘されていたように、テレワークを実施できないことを理由に入職を辞退する事例も出てきており、多様な働き方を認めないことは、採用における致命的な弱点となり得ます。

国や自治体の補助金等も活用しながら、セキュリティを担保したクラウド型介護ソフトの導入やスマートフォンの貸与など、テレワーク環境への投資を「コスト」ではなく、人材確保と業務効率化のための「未来への投資」と捉えていただきたいのです。

介護業界が今後も社会のインフラとして機能し続けるためには、ケアマネジャー自身が健康で、やりがいを持って働き続けられる環境が不可欠です。

本コラムが、各事業所においてテレワーク導入に向けた一歩を踏み出す契機となることを願ってやみません。

【参考URL】

居宅介護支援及び介護予防支援における 令和6年度介護報酬改定による影響等に関する 調査研究事業 報告書 三菱総合研究所