
政府が今国会に提出した介護保険法改正案には、 住宅型有料老人ホームの入居者を対象とした新たなケアマネジメント類型 「登録施設介護支援」 が盛り込まれています。
最大の焦点は、ここに 原則1割の利用者負担を導入する という点です。
これに対し、「認知症の人と家族の会」は強い懸念を表明し、 制度の公平性を損なうとして緊急要望書を国会議員へ提出しました。
本稿では、この制度が抱える問題点を整理し、 現場の視点から再考の必要性を訴えます。
住宅型ホーム入居者だけが“負担増”という不公平
今回の新類型は、住宅型有料老人ホームに入居する中重度者を対象に、 ケアプラン作成や生活相談を包括的に提供する仕組みです。
政府は、
・囲い込みの是正
・サービスの使い切り防止
・給付費の抑制
を目的に、ここに 原則1割負担 を導入するとしています。
しかし、ここで大きな問題が生じます。
● 同じ「住まい」なのに、負担が変わる
これまで住宅型ホームは、 「自宅」「賃貸住宅」と同じ扱いでした。
つまり、 住まいの形態によってケアマネジメントの負担が変わることはなかった のです。
それが今回、住宅型ホーム入居者だけが 「ケアマネジメントに1割負担」を求められることになります。
認知症の人と家族の会が指摘するように、 これは制度の公平性を根本から揺るがす問題です。
“囲い込み対策”という名のレッテル貼り
政府は、住宅型ホームにおける 「囲い込み」や「サービスの使い切り」を問題視しています。
しかし、現場の実態はどうでしょうか。
・医療依存度の高い入居者
・家族の支援が得られないケース
・夜間対応が必要な認知症高齢者
など、住宅型ホームには支援ニーズの高い方が多く入居しています。
そのため、 訪問介護・訪問看護・通所サービスなどの利用が増えるのは当然であり、 それを“使い切り”と決めつけるのは乱暴です。
むしろ、 「必要なサービスを必要なだけ提供している」 という現場の努力を否定することにつながります。
ケアマネジメント有料化は“重度化リスク”を高める
ケアマネジメントは、 介護サービスの入口であり、 生活の安定を支える“要”の機能です。
ここに負担を課すということは、 利用控え → 状態悪化 → 重度化 → 給付費増大 という負の連鎖を引き起こす可能性があります。
特に住宅型ホームの入居者は、
・認知症
・慢性疾患
・独居に近い生活
など、支援が不可欠な方が多い層です。
この層に負担を強いることは、 制度の目的である 「介護予防・重度化防止」 に真っ向から反します。
“住まいの形態で負担が変わる”ことの危険性
認知症の人と家族の会が最も強く訴えているのは、 「住まいの形態で負担に差が生じることは制度の信頼を揺るがす」 という点です。
これはまさにその通りで、 介護保険制度は「どこに住んでいても平等に支援を受けられる」 という理念のもとに設計されています。
もし今回の新類型が導入されれば、
・住宅型ホーム入居者だけが負担増
・特養やサ高住との不公平
・“住まい選び”が経済的理由に左右される
という深刻な問題が生じます。
制度の根幹である 公平性・普遍性 が損なわれるのです。
本当に必要なのは“負担増”ではなく“質の担保”
政府は給付費抑制を目的にしていますが、 本当に必要なのは ケアマネジメントの質の向上 です。
・アセスメントの質
・多職種連携
・医療との協働
・生活支援の充実
これらを強化することで、 結果的に重度化防止につながり、給付費の適正化にも寄与します。
負担増は、 短期的には財政を軽く見せるかもしれませんが、 長期的にはむしろコスト増につながる危険性があります。
まとめ
住宅型有料老人ホーム入居者を対象とした 「登録施設介護支援」の創設と1割負担導入は、 制度の公平性を揺るがす大きな問題を抱えています。
認知症の人と家族の会が強く反対するのは、 現場の実態を踏まえれば当然のことです。
介護保険制度は、 すべての高齢者が平等に支援を受けられる仕組みであるべき です。
住まいの形態で負担が変わる制度は、 その理念を損ない、利用者の生活を直接的に圧迫します。
今こそ、制度の本質に立ち返り、 利用者の生活と尊厳を守るための議論が求められています。




