
「人が足りない」「新人が定着しない」 訪問介護の現場で、最も深刻な課題のひとつが“担い手不足”です。
高齢化が進む一方で、訪問介護員の数は年々減少傾向にあり、サービス提供体制の維持すら危ぶまれる地域も出てきています。
本稿では、訪問介護の担い手をどう確保し、育て、定着させていくか――そのリアルな課題と、現場でできる工夫について考えてみたいと思います。
■ なぜ訪問介護は“人が集まりにくい”のか?
訪問介護は、利用者の生活に深く関わるやりがいのある仕事です。
しかし、以下のような理由から、「選ばれにくい職種」になってしまっている現実があります。
・一人で訪問する不安感
「誰にも見られていない」「相談できない」という孤独感が、特に新人にとっては大きなハードルになります。
・業務の難しさが伝わりにくい
生活援助=家事代行という誤解が根強く、専門性ややりがいが伝わりにくい状況があります。
・柔軟な働き方がしづらい 短時間勤務や希望時間帯の調整が難しく、家庭との両立がしにくいと感じる人も少なくありません。
こうした“見えにくいハードル”をどう乗り越えるかが、採用・定着のカギとなります。
■ 採用の工夫:「伝え方」を変える
まずは、訪問介護の魅力をどう伝えるかが重要です。
🔹 「やりがい」より「日常のリアル」を伝える
・「ありがとう」が直接もらえる仕事
・利用者との関係性が深まる喜び
・一人で動ける自由さと責任のバランス
こうした“リアルな声”を、動画やSNS、採用パンフレットなどで発信することで、共感を呼びやすくなります。
🔹 ターゲットを明確にする
・子育て中の主婦層
・定年後の再就職希望者
・福祉系の学生や未経験者
それぞれに合わせた求人媒体・メッセージ・働き方の提案が必要です。
■ 定着の工夫:「孤立させない」仕組みづくり
採用できても、早期離職を防ぐ仕組みがなければ、担い手は育ちません。
🔸 OJTの“見える化”と段階的な育成
・初回訪問は必ず同行し、不安を言語化できる場をつくる
・「できることリスト」で成長を実感できる仕組みを用意する
・定期的な面談で、不安や悩みを拾い上げる機会を設ける
🔸 メンター制度の導入
・ベテラン職員が“相談役”として新人をサポート
・「困ったときに頼れる人がいる」安心感が、定着率を高めます
🔸 柔軟な働き方の提案
・週1回・1日2時間からの勤務もOK
・子育てや介護と両立できるシフト調整
・「短時間でも戦力」として評価する文化づくり
■ 育成の工夫:「見えない技術」を伝える
訪問介護には、マニュアル化しにくい“暗黙知”が多く存在します。 それをどう伝えるかが、育成の質を左右します。
🔹 ケース共有とロールプレイ
・「こんなときどうする?」をテーマにした事例検討会
・実際の場面を想定したロールプレイで、対応力を育てる
🔹 動画や写真での“見える化”
・支援の手順や声かけのコツを動画で記録・共有
・「見て学ぶ」機会を増やすことで、理解が深まります
🔹 ベテランの知恵をチームに還元
・「私の工夫」「失敗談」などを定期的に共有する場を設ける
・ベテランの経験を“属人化”させず、チームの財産にする
■ まとめ:「育てる仕組み」が、未来の訪問介護を支える
訪問介護の担い手不足は、制度や報酬だけでは解決できません。
現場の中で、「伝え方」「支え方」「育て方」を見直し、“育つ・育てる文化”を根づかせることが、持続可能な訪問介護の第一歩です。
一人ひとりの不安に寄り添い、チームで支え合いながら、 「この仕事を続けたい」と思える環境をつくること。
それが、これからの訪問介護に求められる“経営の力”ではないでしょうか。




