東京都の特養入所申込者数が減少傾向に ――最新調査から読み解く高齢者福祉の今とこれから

東京都が3年ごとに実施している「特別養護老人ホームの入所申込者の状況に関する調査」の最新結果(令和7年度)が公表されました。

この調査は、都内62区市町村を対象に、特養への入所申込者の実態を把握し、次期「東京都高齢者保健福祉計画」の策定に活かすための基礎資料として位置づけられています。

 

今回の調査では、入所申込者数が前回比で約13%減少し、特に「在宅・要介護3以上かつ優先度高」の層も減少傾向にあることが明らかになりました。

本稿では、調査結果のポイントを整理しながら、今後の高齢者福祉政策に求められる視点について考察します。

■ 特養入所申込者数は3回連続で減少

東京都の調査によると、特別養護老人ホームの入所申込者数は、令和元年度から一貫して減少しています。

 

・令和元年度:29,126人

・令和4年度:23,694人(約19%減)

・令和7年度:20,650人(約13%減)

 

この数値は、同一人物による複数施設への申込みを除いた実数であり、実態に近い需要を反映しています。

また、主な入所対象である「要介護3以上」の申込者数も、令和4年度比で約13%減少(21,495人→18,776人)しており、全体的なニーズの縮小が見て取れます。

 

■ 「在宅・要介護3以上かつ優先度高」の層も減少

特養入所において、特に入所の必要性が高いとされるのが、「在宅で要介護3以上かつ優先度高」と判定された申込者です。

 

・令和元年度:3,820人

・令和4年度:3,016人(約21%減)

・令和7年度:2,888人(約4%減)

 

今回の調査では、前回ほどの大幅な減少は見られなかったものの、引き続き減少傾向にあることが確認されました。

なお、「優先度高」とは、介護の必要性や家族の支援状況、居宅サービスの利用状況などを総合的に勘案して、区市町村や施設が判断する区分です。

■ 減少の背景にある“選択肢の多様化”

入所申込者数の減少には、いくつかの要因が考えられます。

 

🔹 特養の整備が進んだこと

東京都では、近年、特養の整備が進み、待機者数の圧縮が一定程度進んだと考えられます。

 

🔹 特定施設の増加

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、施設・居住系サービスの選択肢が広がったことも、特養への申込みを抑制する要因となっています。

 

🔹 在宅支援の充実

訪問介護や訪問看護、地域包括支援センターの機能強化などにより、在宅生活を継続できる環境が整ってきたことも影響していると考えられます。

■ 要介護度別の内訳と在宅者の割合

令和7年度調査では、要介護3の申込者が最も多く、7,565人(全体の36.6%)を占めています。

次いで、要介護4が5,557人(26.9%)、要介護5が4,301人(20.8%)と続きます。

 

また、申込者のうち在宅で生活している方は9,589人(46.4%)であり、半数近くが自宅での生活を続けながら入所を待っている状況です。

 

■ 今後の高齢者福祉計画に求められる視点

今回の調査結果は、第10期東京都高齢者保健福祉計画(令和9年度~11年度)の策定に向けた重要な基礎資料となります。

そこから見えてくる今後の課題は、以下の通りです。

 

🔸 “量”から“質”への転換

施設整備による量的拡充から、個別ニーズに応じた質の高いケア提供への転換が求められます。

 

🔸 多様な選択肢の整理と情報提供

特養・有料・サ高住など、多様化する施設の違いや特徴を分かりやすく伝える仕組みが必要です。

 

🔸 在宅支援との連携強化

在宅で暮らす高齢者が増える中で、訪問系サービスや地域資源との連携強化が不可欠です。

■ まとめ:特養の“役割再定義”が求められている

入所申込者数の減少は、単なる需要の減少ではなく、高齢者の暮らし方や価値観の変化、サービスの多様化を反映した結果とも言えます。

 

これからの特養には、「最後の砦」としての役割だけでなく、 地域包括ケアの中でどう機能するか、どんな高齢者に何を提供するのかという“役割の再定義”が求められています。

 

制度や計画の策定にあたっては、こうした現場の実態と変化を丁寧に読み解き、 “必要な人に、必要な支援が届く”仕組みづくりがますます重要になっていくでしょう。

 

【参考URL】

都庁ホームページ 「特別養護老人ホームの入所申込者の状況に関する調査」の結果 報道発表資料 2025年12月26日