人員基準欠如減算の“特例措置”が示すもの──人材難時代の介護現場を守るために

2024年度改定以降、介護現場では人材不足が深刻化し、 「人員基準欠如減算」が事業継続の大きなリスクとなっていました。

 

そんな中、厚生労働省は6月算定分から、 減算の適用を最大3カ月猶予する特例措置を正式に示しました。

 

本稿では、この特例措置のポイントと、 介護事業所が今取るべき対応について整理します。

なぜ今、特例措置なのか

厚労省が今回の通知改正に踏み切った背景には、 「人員基準を満たせない事業所が増えている」という現実があります。

 

介護職員の採用難は全国的に深刻で、 欠員が出た瞬間に減算が適用される仕組みは、 事業所にとって“経営リスク”そのものでした。

 

特に、

 

・急な離職

・家族の看護

・感染症による長期休み

 

など、事業所の努力ではどうにもならないケースが増えています。

 

こうした状況を踏まえ、 厚労省は 「突発的で想定困難な欠員」 に限り、 減算の適用を最大3カ月猶予する特例を設けました。

特例措置のポイント──“1年に1回・最大3カ月”

今回の特例措置の概要は以下の通りです。

 

● 対象

突発的で想定困難な事情により欠員が生じた場合 (例:急な体調不良、家族の看護、複数の急な離職)

 

● 内容

人員基準欠如減算の適用を 最大3カ月(翌々月まで)猶予

 

● 回数

1年に1回のみ

 

● 除外

介護職員・看護職員が 基準から1割以上不足している場合は対象外

つまり、 「努力してもどうにもならない欠員」に限り、 事業所を守るための“安全弁”が設けられた形です。

特例を受けるための4つの要件

厚労省は今回、特例措置の適用要件として以下を明記しました。

 

① 公的機関を通じた採用活動

ハローワーク、福祉人材センターなどで求人を出していること。

 

② 民間紹介会社を使う場合は「適正認定事業者」

国が認定した紹介会社を含める必要があります。

 

③ 自社ホームページ等で採用情報を発信

積極的に採用活動を行っていること (ホームページがない場合は除外)

 

④ 既存職員への過度な負担を避ける体制整備

労働時間管理や業務調整を適切に行っていること。

 

これらは、 「本気で採用努力をしている事業所を守る」 というメッセージでもあります。

申請手続き──“翌月までに速やかに”

特例を希望する場合、 新たに示された届出書に以下を記載し、自治体へ提出します。

 

・欠員の理由

・採用活動の状況

・職員負担への配慮

・求人票の写し(提出時点で有効なもの)

 

提出期限は 欠員が生じた月の翌月まで

遅れると適用されないため、 管理者は早めの準備が必要です。

特例措置が示す“国の本音”

今回の特例措置は、 単なる減算猶予ではありません。

 

厚労省は、 「人材不足は構造的問題であり、事業所の努力だけでは限界がある」 と認めたとも言えます。

 

一方で、 採用努力や労務管理を求める要件が明記されたことは、 事業所に対して 「努力しているところを守る」 という姿勢の表れでもあります。

事業所が今すぐ取り組むべきこと

今回の特例措置を踏まえ、 事業所が取るべき行動は次の3つです。

 

① 採用活動の“証跡”を残す

求人票、紹介会社とのやり取り、面接記録など、 採用努力を示す資料を整理しておくこと。

 

② 労務管理の徹底

既存職員の負担増は、離職の引き金になります。 シフト調整・業務分担・残業管理を見直すことが重要です。

 

③ 欠員発生時の“申請フロー”を整備

誰が、いつ、どの書類を準備するのか。 事前にフロー化しておくことで、申請漏れを防げます。

まとめ

今回の特例措置は、 人材不足に苦しむ介護現場にとって大きな支えとなります。

 

しかし同時に、 採用努力や労務管理の強化が求められることも事実です。

 

【参考URL】

介護保険最新情報Vol.1502 厚生労働省老健局